いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

バンド。異なる者たちの共同体

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「バンド論」という本に出会った。サカナクションの山口一郎さん、くるりの岸田さん、bonobosの蔡さん、サニーデイサービスの曽我部さん、クロマニヨンズ甲本ヒロトさんのインタビューが掲載されている。文字通りバンドについて語られている。バンドとはロックバンド、つまりビートルズとかローリングストーンズのような、音楽を演奏するグループのことだ。

ちがうちがう、ちがうんだよ。こうしてふつうに生きているときは、バンドの人でも何でもない。4人が集まって、ステージの上でガッてやった瞬間、そこに「バンド」が現れるんだ。

甲本ヒロト

ぼく自身、10代からバンドをはじめて、3つ目のNOINONEというグループでたぶん25年くらい活動している。20代から30代まではバンドで多少は有名になるかもと期待した。けれども、そうはならなかった。一旦やらない時期もあった。けれども誰かがやる気になってまた集まってを繰り返していまも続いている。

バンド論を読んで気がついた。ぼくは音楽をやっているというよりもバンドをやっているのだ。ぼくは詩を書き歌う。ぼくは曲を作らない。曲はベースの宮下がつくるようになった。だから音楽をやってる訳でもない。今年に入って、ついにレコーディングもやった。まだ仕上がってはいない。その作業過程で気がついた。バンド内で意見を統一するために長いミーティングをしたりケンカしたりしてきた。けれども誰かがやろうとしたことを同じ意見にまとめる必要はない。誰かがやりたいことを他のメンバーが全力でサポートすればいい。そう考えられるようになった。

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バンドで作るぼくらの音楽は特殊だ。説明が難しい。パンクではある。ロックでもある。詳しく説明すると、ぼくはボーカルだけど歌わない。言葉を並べている。その羅列にリズムがあって、それがぼくの歌い方。ラップに近い。でもラップをしているつもりもない。誰かの曲をカバーしたのは高校生のとき、ラモーンズとクラッシュとセックスピストルズだけだ。つまりはすぐに自分の歌い方をみつけた。そんな具合だからぼくの歌が変だと思う人もいるだろう。けれども、そんなことは問題なくて、この歌い方を受け入れてくれ、一緒に活動してくれる仲間がいる。それがバンド。評価されないバンドがこれだけ続くのも珍しいと思う。たぶん、ぼくたちは、ぼくたちの音楽が好きなんだ。似ているようなものがあまりないから。

もちろん大きく分類すれば、ロックだし、パンクだし、CANやNEU!というドイツのロックバンドから影響受けているし、テクノのようなダンスミュージックにも影響を受けている。Andrew Weatherallが生きていたら、きっとぼくたちの音楽を理解してくれると思う。まあ、これも勘違いだろうけど。つまり全体的な思い込みが原動力になっている。

メンバーがそれぞれ、能力が足りてなくて、技術も及ばなくて、バンドという共同体の運営の仕方も分からないし、とにかく試行錯誤して、諦めないまま現在まで続いている。それだけでぼくは奇跡だと思っている。いつ終わるか、それは定かじゃないし、突然やって来るのだと思う。だから、ひとつひとつのライブを大切にしたい。数少ないリハーサルを楽しく充実したものにしたい。まだ完成させたことのないアルバムも作りたい。作品を残すことが唯一バンドが存在した証になるから。

バンドをやることがぼくの原点だとも思い出した。ぼくはバンドマンになりたかった。高校生のときに。夢は叶っている。そして夢はずっと続いている。今も叶い続けている。バンド論を読みながら、成功した人たちの言葉に共感しながら涙が止まらなかった。もちろん、ぼくは社会的にはまったく成功してない。でもバンドをやっている。仲間たちと音楽をやっている。

そんなバンドNOINONEで今日ライブする。

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