いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

自分を耕して未来をつくるために書く

どんな本にしようか。いま考えている。もちろん、出版先なんて決まっていない。作品がなければ、流通もしないし、誰も読むこともできない。だからまず作る。構想する。

 

「生きるための芸術」をシリーズにしたいと考えている。一巻と二巻を出版した。ぜひ読んでみて欲しい。きっとぼくが死んだら読まれるんだと思う。次は3巻目。何巻まで冒険できるのか。漫画のように人生を物語にして続けたいと思っている。ぼくは作者であり、物語の登場人物でもある。本を構想することは現実の未来をつくることになる。つまりライフスタイルを創造し続けることになる。

 

本には文体があって語りのスタイル。たくさん読んだ中でも特に好きな本があって、岡倉天心の「茶の本」。その短いところに詩情に満ちた言葉たちが並ぶ。そもそも英語で書かれたというのも素晴らしい。ハキム・ベイの「T.A.Z.」も茶の本に似ていて、まるで詩のような言葉が並んで、凝り固まった思考を解してくれる。両方とも、生活に関する革命の書でもある。

父親が持っていたカフカの「断食芸人」という本があった。文字が大きくて、短編を本にしたものだった。高科書店という出版社から出ていて、調べたところ、実際にカフカが生前に出版できた本の再現らしい。カフカの本では「失踪者」が好きだ。カフカの文体は、言葉が生きている。もちろん翻訳者のおかげだけれど。白水ブックスの池内紀さんの訳が良かった。

つまりのところ、詩のように凝縮された活字の大きい短い本にしたい。こうやって書いてみると頭の中でモヤモヤしていることが随分とはっきり見えてくる。書くということは、現実に刻みつけることで、自分の考えていることを彫刻することでもある。本の中身が溢れてくるまで、自分のなかを掘るように、こうやって日記を書き続けることにした。

 

書こうとしている本の内容は「生きるための芸術」シリーズの続編で、主には生活と芸術についての文章にしたい。とても、当たり前のことが当たり前ではなくなっているこの時代に「生活する」大切さを書き残したい。とは言え、何かを達成したり、何かの専門家でもないから、書けることは実体験になる。書いた本の内容が自分の未来だから、書かなければ先に進めない。書かなければ、同じ場所に留まることになる。植物は成長して枯れる。種を飛ばして芽を出す。人間も成長を繰り返す。何かをやって終わることを恐れずに、終わればまた次がある。働くことは生活の一部で、やらなければ死んでしまう。生きることは運動だ。

 

生きることに向き合ってみたくて、世間で言うところの仕事を辞めて、芸術家になると宣言したものの、芸術家もまた職業のひとつでしかなく、自分の人生を生きることとは、また別の話だった。絵を描くことは、大地を耕すほどには、生産的ではないし、誰かの飢えを癒すことはできない。ぼくがしたいことは、大地を耕し、食べ物をつくり、身の回りのモノを活かして環境に負担なく妻と二人で暮らし、そうした生活の中から生まれた絵を世の中に届けることだ。

 

どこで何をしようとも、上手い絵が描ければ芸術なのか、という疑問がある。作ったものが、何の素材で作られて、やがてどうなっていくのか。つまり、作品が生まれて死ぬまでをどう表現するのか。それは、その人の生き方と作品がお互い交感して高め合うような。人間は環境に生かされている。ぼくがしようとしていることは、芸術というよりは、人間としてどう生きることが美しいだろうか、という問いだ。

だから、生活そのものが芸術になれば、殊更に強調することもなく、生きていることが芸術になると考えている。これは、ぼくだけが特別できることでもなく、むしろ、誰もが実践できる毎日の表現だ。

マルセル・デュシャンは便器を芸術にして、その概念を更新した。ヨーゼフ・ボイスは、社会彫刻という概念をつくり、社会を変えてつくる芸術を実践した。

 

妄想をこうして書いてしまえば、構想になって、それを書き続ければ本になる。言葉のうえでは、そう言うことができる。では行動として表現として、どんなことができるのか。このまま来年もこの方向性で行動し思考して、生き延びみようと思う。その代わり1日1日を渇きを癒すひと掬いの水のように大切に生きたい。ぼくたちは、今日という日があるから生きている。

 

生きるための芸術シリーズ

生きるための芸術 40歳を前に退職。夫婦、アートで生きていけるか (ファミリーズ「お金からの解放」シリーズ)

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  • 出版社/メーカー: メディア・パル
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漂流夫婦、空き家暮らしで野生に帰る。 -生きるための芸術2- (「お金からの解放」シリーズ)

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