週末は、岐阜県白川町のイベントに呼ばれ金曜日の朝、北茨城市から600kmの道のりを旅した。途中、東京では自分の母親に会って、夜は長野県岡谷市の妻チフミの実家で一泊させてもらった。チフミの両親と妹とその娘にも会えた。土曜日の朝、岡谷から白川町まで下道で、家や風景を楽しみながらクルマを走らせた。高速道路を使わないことでも小さな冒険ができる。未だ知らない地域の風景に出会うことができる。
白川町は、岐阜県中津川市のICからさらに1時間。帰りに高速を使って分かったことだけど。イベント会場となる高瀬家の周辺にはコンビニもないし、ビールも売っていない。なかなか不便なところ。イベントを主催する高瀬コージくんは、名古屋で花屋の仕事をしながら、この地域を開拓している。
イベントは里山メルヘン計画「野茶会」題され白川町の特産品である白川町を楽しむ会で、催し物にパフォーマンスやライブ、DJがあって、飲食店が出店した。高速から1時間も離れた山の中の集落に、これだけ人が集まるのか!と驚く光景だった。
会場には、竹を伐採して作った巨大なブランコがあった。庭師のツヨシくんが手掛けている。子供たちはそれみつけて「何あれ!やべぇ!超やべぇ!」と駆け足で飛びついた。
どうやってこんなオブジェを考案したのかツヨシくんに聞くと
「むかしから庭師は重い石を運ぶのに竹を組んでテコにして持ち上げたんだ。足場が悪いところでは2本の竹を使って石を持ち上げたんだ。だから、人間くらいだったら全然大丈夫なんだ」
かつての技術を採取して現在に活かす。まさに生活芸術。これは是非真似したい。すべての創造は模倣から始まる。
ムニャムニャ族という架空の民族がこのイベントに生息していた。テントを張ってそこで煮炊きして暮らしていた。儀式も執り行われた。主催のコージくんのムニャムニャ族になった。
イベントに参加している人と話した。30代から40代の家族連れが多く、そのほとんどは移住者だった。茨城県からの人もいた。聞くところによると、就農する場所を探してたどり着いたらしい。7年前くらいからその動きが始まり、今では10世帯くらいが、いそうな感じだった。やはり、東日本大震災をきっかけに動いた人ばかりだった。あのとき時代は動いた。この先にどんな道を提示できるのか、ぼくらは問われていると思う。
戦後から、高度成長期を経て、日本人は農村から都市へと移動して、自然に働きかけて食料を得ることより、経済を成長させることを選んだ。経済と都市は発達し世界上位の経済大国となった。経済大国という風船をとにかく膨らませ続けてきた。結果、破裂した。震災による原発事故をそう例えることができる。まるでバベルの塔だ。
ぼくたち檻之汰鷲はこの会場に旗を立てた。日本の歴史を遡って野茶会にふさわしい旗を用意した。風になびく旗は、自然と人間を繋ぐ象徴だ。その旗を現地で竹を伐採して立てた。自然のなかに、色と形を添えて風景をつくる試み。都市ではなく、里山に旗を立てるのは、震災以降、新たな暮らしを模索する人々の象徴。我や彼らを応援する旗。
みんな探り探りだ。どうやって生きていけばいいのか。その答えはないのだから、自分で探すしかない。自分の道をみつけることを「冒険」と呼ぶ。安定も安心もない。そもそも安全を誰かに確約してもらうことこそ危ない。「安全を謳う広告は危険そのもの」誰かに安全を提供してもらうことは高額な消費をすることになる。クルマにしろ、家にしろ、野菜にしろ、遊び場所にしろ。
イベント中は、北茨城市でやっているガーランドづくりをやった。子供たちが集まってきて、旗に絵を描いて、会場を飾った。40mもの長さになった。
帰りにチフミの実家で一泊して、久しぶりにテレビを観た。
ある議員の「戦争をするしかない」という発言。戦争なんてない方が良いに決まっている。けれども、それは理想だと反論される。アメリカのチカラを借りずにどうやって自分の国を守るのか、それは武力しかない、と。ぼくは、昭和49年に生まれ、戦争を否定する教育を受けてきた。そういう映画や小説や漫画を読んで育った。だから「戦争」なんて手段が可能性のひとつとして言葉にされることすらあり得ないと思う。
老人の運転の危険について報道されていた。ぼくのお爺さんの世代、もうほとんど亡くなっている、その世代はクルマがない社会で暮らしていた。けれども、高度成長期にクルマは生活に必須となって、豊かさの象徴となって浸透していった。おかげで田舎のカタチも変わってしまった。免許証とクルマがなければ生活できない地域になってしまった。
戦後から現在まで膨らませ続けてきた風船は、あちこちで破裂している。戦争発言、老人による事故の多発。
それぞれについて、どうこうコメントするよりも、自分の暮らしをつくることで、行動することで、それぞれへの答えを示したい。
小さな試みが積み重ねが繋がって、新しい暮らしのヒントの種が蒔かれたらいい。その芽が分断していく隙間を埋めるように、右や左、上や下に橋をかけるように花開くことを信じて。
ぼくたち夫婦、檻之汰鷲も新しいスタートラインに立っている。人生を作品にするシリーズ第3巻を構想したい。
これまでの檻之汰鷲の本
第1巻
生きるための芸術 40歳を前に退職。夫婦、アートで生きていけるか (ファミリーズ「お金からの解放」シリーズ)
- 作者: 檻之汰鷲,(発行)ファミリーズ
- 出版社/メーカー: メディア・パル
- 発売日: 2017/05/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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第2巻
漂流夫婦、空き家暮らしで野生に帰る。 -生きるための芸術2- (「お金からの解放」シリーズ)
- 作者: 檻之汰鷲,(発行)ファミリーズ
- 出版社/メーカー: メディア・パル
- 発売日: 2018/12/20
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続く。