いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

生活芸術、2020から2021へ。

f:id:norioishiwata:20201231223437j:image

今年も生き延びた。コロナ禍の一年だったから、ほんとうにこの環境に感謝しかない。いつも一緒に制作してくれる妻に。この場所を与えてくれた北茨城市に。地域の方々へ。生活芸術という活動を理解し応援してくれる人に。これを読んでくれる人に。

2020年は「生活をつくる」という活動が着地した年になった。まさに大地に根を張る年だった。生活そのものを表現にすると取り組んできた7年。去年から改修をはじめた廃墟は家として完成して、景観づくりまでに展開した。井戸水を配管して、薪ストーブに火を炊いて、木を伐ったり、種を撒いたり、収穫したり、荒れ地を開墾したり。この冬、自分で作った家で暖かく過ごせている。水も美味しい。近所の人からの食べ物のお裾分けのおかげで食料は豊富にある。まさに環境に活かされている。

活動の中から作品のアイディアをみつけてカタチにしていった。井戸を掘った粘土から土器を作った。さらに発展させて、実用的な器を作りたい。自分で使うモノを自分でつくる。それを目的としたモノの在り方。それを見てみたい。

トウモロコシの皮で紙を作った。紙未満のモノだけれど、これもやがて作品に発展できる。原料の楮(こうぞ)はみつけた。

炭窯を作った。2回やってどちらも失敗した。おかげで、炭に詳しくなってきた。土と水と火と風と木と。5大要素を学ぶことから展開する何かに期待している。

3冊目の本を書いた。製本して幾つかの出版社に送ったけれど、出版の話しは、まとまらなかった。4人の編集者が返事をくれた。お断りのメールだったけれど、どの人も真剣に本づくりをしている熱が伝わってきた。だから、本は春まで寝かせて、加筆修正して完成させることにした。この冬を越さなければ物語を閉じて循環させることができないと感じた。返事をくれた方々に心から感謝している。第一線で活躍する編集者からの返答は進むべき道を照らしてくれた。

さらに作品集を作りはじめた。文化庁の助成を利用して日本語と英語を併記した本を作っている。翻訳をプロに依頼したけれど、レイアウトの都合、自分で仮に翻訳することにした。本のデザインを仮組みしてから翻訳の原稿を提出することにした。英語はもっと上達したい。はじまりから未来へと、自分たちの活動を橋渡しする本になる。海外へと活動を広げるきっかけになる。諦めなければ何事も続いていく。

つまり2冊の本が同時進行している。今年は何かの結果は出なかったけれども、新しい芽を育てている。

年始に本を読みたくて、いわき市の図書館に行った。今年は井筒俊彦さんの本「意味の深層」を読んで久しぶりに哲学思想系の脳が動き出した。言葉が球体になって、裏や表、その深みへと飛び回りたがっている。井筒俊彦「コスモスとアンチコスモス」ドゥルーズガタリ千のプラトー」を借りた。

図書館で本棚を見て歩いていたら「薪を炊く」という本をみつけた。ノルウェーの本で、薪について書いてある。ページを捲って、即座にやられたと思った。薪について、あらゆる方向から言葉を走らせている。寒さとか薪を積むこと、薪を割ること、暖かさについて。まさにノルウェーの生活芸術がここに記されている。

すべては道の途中だ。完成はなくて、何かが仕上がったとき、それは終わりのはじまり。はじめて書いた本は「Before After The End」個人的な神話世界を描いた。今年、ようやく10年前の作品に向き合うことができた。

外からの刺激がなければ新しい眼差しはみつからない。過去、日々、思索、周りの環境、生活、そのなかに必要なモノはすでに揃っている。あとは、見出すこと。拾い上げること。磨くこと。芸術、即ち、表象、表現、それらに神経を通わせたい。身の回りも喜びを与え、喜びを受け取り、生きていく。

2021へ続く。
明日からまた365日はじまる。