ペットボトルで筏をつくった。ぼくはこの数年、舟をつくりたかった。北茨城市で、和船に出会ったけれども、その重さに怯んでしまった。仮に木材で和船をつくっても、運搬もできないし保管場所もない。もう少し、やるべき理由が重なるまで保留にすることにした。
そこで、もっともシンプルな海の乗り物、SUPをつくることにした。SUPとは、stand up paddleという立って漕ぐサーフボード。サーフボードとも呼べるけれども、つまりは筏。海に浮かぶ板状のモノをつくればいい。
モノづくりで、重視したいのは、材料がどこからやってきて、どこへいくのか。その流れは、モノが環境に与える影響を可視化してくれる。この日本には、使えるモノがたくさんある。ザンビアやアフリカを旅して、その違いに驚かされた。モノが少ない地域は「ない」を「ある」に変える創造力を持っている。その発想力で、日本を見渡せば、お宝がたくさん転がっている。
日本には、SUPを買える経済力がある人はたくさんいるだろうけれど、そもそもそれを買う目的は何か?突き詰めれば「海の上に立つこと」(イヤ、手づくりなんてダサい、お洒落なSUPに乗りたいって人もいるだろうけれど、ぼく的には、10万円もの金額を知らない人に払いたくない)。
そんなときは、サバイバル的な発想の転換で考えてみる。これが栽培化された思考の設計図やマニュアル的なやり方の対極にある野生の思考。動物が巣をつくるような身の回りの材料でつくる自然に即した表現技法。ぼくはサバイバルアートと呼んでいる。
今回は
・ペットボトル 2L 48個
・木材①240cm 4本
210cm 2本
150cm 2本
・角材②160cm 2本
・紐
・インシロック
が主な材料
全部で5000円もしない。
ポイントは、ペットボトルの浮力をどうやって束ねるのか。その解決策として、木材にペットボトルを縛り付けた。実際に乗ってみると、捩れて不安定なので、横板も追加した。これで、海の上を立って漕げる。パドルも自作。
ぼくの野望は、こうした創作がアートとして評価されるようにしたい。なぜなら、この筏は、環境負荷が少ないし、元々、ゴミだったモノを再利用しているので、また同じようにゴミに戻せるし、世界中の至るところで、この筏をつくることができる。金持ちも貧乏人も関係ない。
ぼくの考える「アート」とはARTの語源のアルスで、それは技術を意味する。特別な知識や経験を必要としない、原始的な技術のカタチを発掘、創造したい。ぼくは、それらをアートに位置づけたい。
そのためにも、このペットボトルの筏を、ギャラリーや美術館で観賞するモノへと変換させてみたい。人間は、ゴミを宝にできれば、金をゴミにもしてしまうし、人生をつまらなくもすれば、最高に楽しいものにもできる、嘘も本当に変えるほどの能力もある。そのチカラを証明しよう。ペットボトルの筏は現代アートになる。