いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

「つくる」と「つくらない」の間に

f:id:norioishiwata:20241024190902j:image

とても贅沢な暮らしをしている。と言っても年収が何千万とか、プールがあるような見晴らしのいい家に暮らしているわけでもない。だから自慢じゃない。朝起きて寝るまで、ただ自分のやりたいことをして日々を過ごしている。だから誰にでも実現できる贅沢な暮らしがここにある。

夕方に電話があった。86歳の森川さん。週末のイベントで真菰を販売しよう、との連絡だった。少しの売り上げだろうけど、能登に寄付しよう、と言った。

f:id:norioishiwata:20241024190927j:image

数日前には、真菰づくりを教えてくれた師匠の神永さん86歳が、真菰を大きくして無駄にしたらもったいないと、刈り取って、どこかに持っていった。そして3万円に変えて戻ってきてぼくらにくれた。だからぼくたちはこのお金で腕相撲大会をやることにした。優勝者には、ぼくらの地域のお店で使える商品券をプレゼントする。大地から生まれたお金が地域を循環する。

土曜日に草刈りをしていたら、ワッと地面から何かが飛び出してきて、頭をガツンと叩かれたような痛み。続けて胸や足、慌てて逃げたが、さらに刺されて、たぶん、スズメバチだった。そのまま家に帰って横になって、対策をネットで検索すると、ショック症状がでなければ大丈夫らしいが、痛過ぎた。話には聞いていたけど、ほんとに。土曜日は寝て終わった。

日曜日にギャラリーいわきに行った。陶芸を教えてくれた真木さんの展示。真木さんは75歳。なのに新作はかなり新しいカタチをしていた。つくりながらだんだん進化していったんだよ、と話しくれた。お土産に真菰を持っていったら、ギャラリーに来ていたほかのお客さんが、真菰を作っていたら、忙しくて絵が描けませんね、と言った。そうなんですよ、と返事しようと思ったら、ギャラリーオーナー忠平さんと真木さんが、彼はすべてが作品なんですよ、生きてることを作品にしているから、なんでもやるんです、だからこの真菰も絵画と同じなんですよ、と代わりに言ってくれ嬉しかった。

オーナーの忠平さんに会ったら言いたいことがあった。北茨城の作家にフォーカスした展示企画を天心美術館に提案したい、と。岡倉天心の時代から、大正、昭和、蔡國強と忠平さん、忠平さんが出会ってきた北茨城からいわきの作家たち、ぼくら檻之汰鷲、その文脈をきちんと取り上げたい、と話した。忠平さんは、俺もそう思ってたよ、ちょうど、天心美術館の新しく赴任した学芸員さんと行き合ったばかりだから、すごいタイミングだな、と言ってくれた。

ぼくは絵を描き続けていないけれど、常に表現することを考えて行動している。プールもいらなし何千万円もいらない。アート活動が思うように展開できればいい。もうそれだけが望みだ。

この日記を書いて数日経って、今は週末のイベントの準備をしている。これが終わったらやっと新作をつくろうと考えている。やっと冬が始まる。