いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

自分を活かす技術

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取材のため北茨城市の山を4時間歩いた。その翌日両足を触って気がついた。左足と右足の筋肉が違う。左の方がずいぶん細い。30年前の交通事故の影響だ。5年前に唐突に痛みで走れなくなった。歩くことはできた。整体に行ってみたが辛抱して通うことを勧められた。通ったが回復している気がしなかった。いろいろ調べてみてこう考えた。自分の身体なのだから向き合ってみたらどうか。

座禅を組んでみた。何度か繰り返すうちに身体が曲がっているのが分かった。姿勢を正した。両足を曲げると、左と右で可動域が違う。左足の曲がる角度がおかしい。不具合が理解できた。無意識のうちに歪んでいた。

それから座禅、ストレッチ、筋トレを継続した。やらない日はあっても。だいぶ回復している気がしていたけど、まだ完全ではなかった。それに気がついたから次の段階にステップアップできる。左足を重点にトレーニングすればいい。

10年前ボルダリングに熱中していた。北茨城市に引っ越して岩を探した。けど見つからなかった。が、一昨日、山の麓が伐採されて剥き出しになったところに岩がゴロゴロしていた。発見した。偶然だ。探しているものは続ければいつかみつかるのかも知れない。

ボルダリングとは岩を登るスポーツ。岩壁を登るクライミングとは違ってロープや道具を使わない。ボルダーと呼ばれる2〜3mの岩を身体ひとつでどう登るのか、そのコースを検討して計画する。この検討することをオブザベーションと言う。観察とか観測という意味だ。

オブザーベーションはほかの場面でも役に立つ。この数年は岩には登ってないけれど、どうすれば目的に達することができるかオブザーベーションはしている。現実に。

次の目標を海外での展示に設定した。妻と話してそう決めた。パレスチナ支援のチャリティー展示をアイルランドの友達トムが開催するからと誘ってくれた。パレスチナに対してアクションしたかった。海外への動きの一歩になると考えた。作品を制作して郵送した。ところがトムが不調になってイベントも中止になってしまった。じゃあ、作品もアイルランドにあるし展示をやりたいな、とトムにメールすると、今回は申し訳なかった、協力するよ、と返事をくれた。そのときにトムがマークのギャラリーもいいかもね、と教えてくれた。

それから数ヶ月してアイルランドのTon galleryからインスタグラムに"Hi Bro"とメッセージが来た。なぜ来たのか分からなかった。Ton galleryとマークがどういう関係かも分からない。とは言え、たぶんここがマークのギャラリーだろうと予想できたので「ぼくの次の目標はTon galleryです。作品集を送ります」と返信した。

Ton galleryからすぐに「2025に計画しよう。作品集はpdfで送って」と返事が来た。

これまでも海外での展示を企んで直接ギャラリーに作品を持ち込んだりしたことがある。けどチャンスは掴めなかった。英語レベルの問題もあるけれど、そもそも目的を達成するためのルートが確保されてなかった。それはそうだ。なんの接点もなく突然アプローチしても成功率はゼロに近い。確率を上げる技術。それがオブザーベーションだ。

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休耕田を再利用して真菰を植えている。86歳の師匠が教えてくれている。もう3年目になるし師匠にいいところを見せようと張り切った。貰ったトラクターでドロドロになった田んぼを耕した。がしかしハマってしまった。トラクターは泥沼状態。動けない。師匠が来る前に準備しているつもりがむしろ面倒を増やしてしまった。師匠は状況を確認して仲間に電話した。「4tトラックに石を積んで来てくれ」30分もすると現れた。仲間の皆さんも80前後。ひとりがトラクターに乗ってエンジンをかけると見たことない動きで沼から脱出しそうになる。ワイヤーで4tトラックが引っ張る。10分ほどで問題は解決した。仲間たちは颯爽と帰っていった。師匠は沼になったところは来年にして隣りでやろうと言って、持ち主に許可を得てくれた。そういう訳で真菰の田んぼがひとつ増えた。

ラクターが田んぼにハマってタイヤが空回りして土を練ったことで粘土ができた。嘘のようなほんとの話。トラクターが沼状態のときにみつけていた。おお粘土だとピンチのなかこっそりタイヤにくっついたのを剥がしておいた。あとでそこら辺に落ちたのを回収した。何かのオブジェになったらラッキーだ。トラクターはハマったけどおかげで粘土という素材を手に入れたことになる。

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夜、額を作りながら閃いた。上手くいくまでの過程すべてが試行錯誤で、その時間が長いほど技術は身につく。逆に上手くいって売れてしまえば、そのやり方を繰り返すばかりになって試行錯誤がないままの技術になる。どっちがいいという話しではなく、試行錯誤が長い自分は、こんなことの繰り返しで活動している。だからこうやって自らを励ます技術も成長している。