いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

何よりも「生きている」それを全力で。

桃源郷芸術祭2020が完了した。北茨城市での3年間の取り組みがカタチになった。合計4つの建物を再生して、500坪ほどの土地を活用できるようにした。そしてこの場所に春から暮らしていくことになった。

2014年からスタートした空き家を巡る冒険は、6年の歳月を経て着地した。かつての夢は新しい日常になって次の夢へと冒険は続いていく。暮らしていく場所には、水もトイレもないから、それをどうにかするとか、風呂を作るとか、野菜をつくることや、魚を捕ったり理想の生活づくりは続いていくし、絵の制作も続いていく。昨年、有楽町マルイで展示をやらせてもらい、それが好評で今年も声を掛けてもらった。来月の15日だから、休む間もなく作るしかない。やるしかない。目標は有名になるでも売れるでもなく、生きていくことだ。

 

2019年の秋ころにイメージしたランドスケープを作る計画も実現してきた。北茨城市の定住する地域にサクラを植樹する計画と、炭窯を作るプロジェクトが動き出した。サクラは、手間がかかるから、それをきっかけにこの土地を整備してく約束のためのシンボルだ。「100年後のランドスケープ」というコンセプトで毎年タイトルの数を減らして翌年なら99年後のランドスケープ、98年後のランドスケープ、と三世代後までバトンを渡していくようにしたい。「50年後のランドスケープ」というタイトルになったとき、現在、関わる人間は全員この世には存在しない計算になる。手塚治虫の「火の鳥」みたいなスケールでいこう。

炭窯は、薪の調達も兼ねるし、炭窯の横に野焼きスペースを作りたいと企んでいる。粘土を採取して火と土と水と風の芸術を自分の作品にしたい。

 

空き家を巡る冒険が終わり新しい物語がスタートするから、これまでの話を本にして未来を模索したい。本は、未だ到達していない理想を目標に書いてきた。2冊出版した生きるための芸術シリーズ。次のコンセプトは「生活芸術」だろう。

展示やイベントも面白いけれど、特に何もない日々にこそ、何ができるのか。誰からの依頼も約束もない自分の時間に向き合うからこそ自分の未来をつくれる。

 

「アート」というカテゴライズに興味はなくて、とにかく「生きていくこと」そこにフォーカスしたい。それは身体を動かして命を永らえることだ。現代日本から見える日常生活の景色からでは、ほんとうの意味での生活を知ることができない。水も汲まなければ、火も熾さない。野菜も育てない。生きるために必要なことは何ひとつしていない。そもそも都市では火は焚けない。水も蛇口から出る。便利はそれはそれでいい。恩恵として。でも生き物として授かった能力が失われていく。それでいいのだろうか。もっともっと生きたい。もっともっと自然の中に踏み込んで生活をしてみようと思う。