いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

One of thesedays 61

毎日何か書くと、毎日の自分に向き合うことになる。毎日の何かに向き合うと、毎日出会うヒトや会話の節々にキラキラと光る意味をみつける。もし毎日が退屈なら、それは毎日を過ごす誰かに対しての不満でもあるし、自分への不満でもある。昨日、商売のポイントは「不」だという記事を読んだ。足りないのは何だろうか。それは、今までやってなかったことだし、考えたこともなかったことだし、今までの自分が興味を持たなかったことに、その答えがある。

いまアトリエをつくった古民家の地域のミツコさんが、畑をシェアしてくれたので、ホームセンターで苗を買ってきた。だから、今日は大地を耕した。古民家に残された鍬を使って。その鍬の持ち手は、木を削ってつくられている。何だって人間は生きるための努力をしてきた。

朝の2時間、大地を耕す。英語でcultivate=耕す。カルチャーの語源。大地を耕して種を植えれば食べる物が手に入る。日本は、世界のなかでも比較的に食べ物を手に入れやすい環境に恵まれている。

昼は、田人町のモモカフェにランチにいく。モカフェの隣にはチャンドメラというカレー屋さんがある。その隣にはギャラリー。家族で経営している。

お父さんがやっているカレー屋さんで、高級感あるカレーを食べて、モモカフェでコーヒー。6月のイベントの打ち合わせをしながら、猫と遊ぶ。一匹、足が曲がってしまって3本足で歩く猫がいた。カフェのスタッフが包帯を取り替えてあげる。猫はおとなしく待っている。モカフェは福岡のアーティストがセルフビルドした。オーナーも参加して仲間たちと建てた。手づくり感溢れる建物で、廃材も使っている。できるだけ予算をかけないで建たらしい。

帰りの車でチフミと話した。

「日本には日本のアートがあるんだよね。それを探している。日本のアートは絵画ではないと思うんだ。じゃあ、何だろうか、と考えればやっぱり生活なんだよね。日本は農業大国だったから、自然そのものに由来していると思う。茶道とかね。次の個展のためにタイトルを考えてるんだけど、やっぱり"生きるための芸術"なんだよね。伝わる伝わらないとかあるけど、理解されるからやるとかではなくて、自分が思うことを貫くところにアートがあると思うんだ」

「だから次の個展に向けて、2冊目の本を出版するクラウドファウンディングをやろうと思うんだ。返礼のメニューが自分たちの価値というか仕事になることだと思うんだ」

アトリエArigatee に帰って、制作中の作品を進めた。絵を描くのは、売るためだけではなく、進むべき道がここにあるからだ。商売は、新しくみつけた「生きるための芸術」のコンセプト。たぶん「商売」は人類が文明化された最初期に文字と同様に、必要として誕生した技術だった。その原初のカタチをみつけて、これを作品にしたい。