いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

海外からアーティストを受け入れ日本の文化を体験してもらう夢

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トム・キャンベルがアイルランドからやって来た。トムとは2013年にバルセロナで出会って、パピエマシェという立体の作り方を教えてくれた師匠でもある。

海外を旅するとき、ホストとなって助けてくれる人がいる。もし逆の立場になったとき、ぼくは何ができるだろうか、と考えたのをきっかけにいつか日本に友達を招待したいと思うようになった。空き家を改修して、アーティストインレジデンスをやるのも夢のひとつになった。

トムを成田空港の出口ゲートで待っているとなかなか出てこなくて、何か問題があったのだろうか、と心配になった。1時間ほどしてトムが現れた。会うのは5年ぶりだけどSNSのおけで、そんな気がしない。トムが来たら何をしようか、色々考えてきたけれど、忙しく観光して周るより、日本人の日常を見せた方がいいと思った。「トムに何がしたい?」と聞いたら「何も調べたりしてないから、何も分からない」と。トムはアイルランドでいろんな人の日本の話しを聞いたけれど「誰かの日本には興味はなくて、目の前で起きていることを楽しみたい」と話してくれた。

成田から東京に向かう途中、アイルランドでの暮らしについて話を聞いた。トムは芸術家だ。収入は、絵を売ること、アートプロジェクトで貰う予算、それとワークショップの3つ。

アトリエはシェアしていて家賃は150ユーロ。それとは別に住んでいる部屋が150ユーロ。ここもシェアらしい。税金は払ってない。以前は月2000ユーロのお金を貰っていたそうで、詳しくは分からないけど、生活保護ベーシックインカムのような制度らしい。でも、そのお金を受け取ると何もしなくなるので、受給しないことにした。

アイルランドはお酒飲みの文化があって、週末になると、ほとんどの人がバーへ出かけ、飲酒で人生を壊す人がたくさんいるのが問題らしい。週末になると町が酒臭くなる。トムは酒といつも曇っているアイルランドの空が嫌いだ、と話した。

トムは日本に来るためにクラウドファウンディングをして2000ユーロを作った。けれど日本行きのチケットの自分の名前のスペルを間違えて600ユーロを台無しにしてしまった。

トムは到着して、日本円が5000円しかないから、銀行で下ろしたいと、銀行に行ったらカードが使えなくて、夜は、お菓子とお酒を買って家で飲んでお喋りした。昼はくら寿司で安上がりなランチにした。

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誰かに楽しみを提供することは、豊かさの共有になる。自分が満足することや、一方的に押し付けるだけではなくて、時には自分が黒子に徹して、相手の側を喜びや楽しみで満たしたいと思う。価値を自分の中につくることより、そこ以外に作ることの方が全体豊かになるし、それこそ、生活芸術商売の「商い」の理念に通じると思う。絵を描くことだけではない、もっと広義なアートを表現していきたい。

ちなみにぼくの英語は片言。あるときこう教えてくれた先輩がいた。「英語を話す人の80%がネイティヴじゃないんだ。つまりほとんどの人が片言でテキトーに話してる。だから、全く気にすることない。何度でも伝わるまで、理解できるまで話せばいい」