いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

24ドルでティピの制作をスタート。太古のカタチ、蛍の光を見た日

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朝起きて、いよいよティピの制作を始める。近所の99セントショップでチフミが発見した袋を張り合わせる計画。ティピの柱は、拾ったモップの柄と壊れたテントのポール、それと99セントショップで売っている竹のトーチ。材料代で24ドル。これぞサバイバルアート。

袋を開いて生地にして並べてみると、どうやら10枚で2mのティピがつくれそうだ。ティピには、今回発見したカタチをステンシルでスプレーする。スプレーは制作用に買ってあったものを使う。

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今回発見したカタチから単純化することを学んだ。捨てる覚悟の向こう側に、これ以上ないほど削り落とした先に、答えが現れるのは、きっと現実のライフスタイルでも同じだ。
そのカタチはプリミティブで何か縄文土器にも通じるようで、しかも黒人の女性から戴いたから、とても心地よい。あまりにシンプル過ぎて、ぼくらのライフスタイル同様、理解されないかもしれないが、いつかこのカタチに大きな価値が与えられると信じている。

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午前中から午後まで、ティピの生地にそのカタチをステンシルした。夜、暗くなってきたら(つまりブルックリンだと21時頃)、アパートを管理するAL氏が明かりを灯してくれた。
今日スタートしたティピづくりが調子良かったのでビールを買いに行った。その間にチフミはAL氏と話をして、AL氏が仏教徒で師匠がチベットにいるらしいと教えてくれた。
なぜか、その夜には蛍が飛んでいて素敵な一日だった。AL氏はその光を「ゴッドだ」と笑って教えてくれた。

 

シンプルさとは、全部を削っても残ってしまう諦めの果てに見えること

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昨日はチェッラがバーベキューパーティーに招待してくれた。7月4日はアメリカの独立記念日で昨晩は近所の家々がホームパーティーを開いて遅くまで盛り上がっていた。ほんとうにこの街の人々は音楽が大好きだ。
昨日も朝から制作して夕方、チェッラのバーベキューパーティーに参加していろんな人と話してみたものの英語力不足で息切れ。パーティーの選曲がスペシャルズで今の世界の気分なんだろうか。大好きな曲たちがたくさん聴けた。

遊んでも寝ても起きても考えるのは作品のこと。純粋によいと思える逸品を誕生させること。手癖や慣れを超えなければ辿り着かない。
答えが出ない作品をチフミが没にしようと言った。確かにもう迷宮入りしていた。返事に困っていると「全部白く塗り潰そう」と話しをチフミが進めた。その作品は真っ白になった。それでも2つの要素が残った。六角形のパネル、黒人女性をモチーフにしたシンボル。
さらに作品に日本から持ってきた紺色の布を張り付けることになった。どうやって? いつも作品ひとつひとつに新しい方法を試しては繰り返して答えを探している。
紺色の布を綺麗に貼ること。綺麗に仕上げることは単純化への道だが厳しく狭い。細かい作業が要求される。

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アートを選んでその道を歩いてきて、また新たに学んだというか、発見と気づきと崖っぷちに立って、さらに先が見えた。極限まで削らなければ答えは見えないのかもしれない。作品という単位の表現の奥深さ。今、制作している六角形のシンボルが完成すれば今回の到達点になる。あと少しあと少し。

今回、ニューヨークに滞在して、ぼくらが暮らしたのはブルックリンのフラットブッシュという下の方。マンハッタンと比べたらまるでニューヨークではない。住んでいるのは黒人ばかりで、カリビアンらしい。だから音楽も食べ物もカリビアン。ぼくは装いばかりのマンハッタンよりフラットブッシュの方が好きだ。というかマンハッタンの傍にありながらもアフリカのようなこの街が好きだ。だから、作品のシンボルは黒人女性になった。

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ぼくら人類はどうしてこんなに違うのだろうか。違うのにとても同じなんだ。
作品を展示するためのコンセプトをそろそろつくらなければ。今回の目的はブルックリンとセッション。つまりフラットブッシュと。残りの数日で生きる芸術を記録していこう。

You can make it if really you want /World is yours

「携帯電話を見過ぎるから集中力がない」とチフミに言われた。腹が立って「そんなこと関係ないし集中力は充分ある。」と言い返した。

それが2日前のこと。腹が立ったので携帯電話を見ないことにした。することは作品をつくることだけ。

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そうやって取り組んでみれば確かに集中力を欠いていた。それどころか頭の中にネット経由で得た情報が気づかないうちにインストールされている。つまりニューヨークにいるのに半分以上はインターネットの世界にいることになる。

この2日間朝から晩までほんとうに制作に没頭して自分的にも新しい抽象表現ができた。「絵は楽しいもの」その純粋さを保つには精神的な純粋さが必要なのかもしれない。

作品をつくりなが考えたのは、ニューヨークが居心地が良いこと。つまり日本人である自分はアメリカの影響を受けて育ってきたという事実。また他民族国家であるアメリカは皆が余所者。ほとんどの人種が何処からやってきた。カフカのアメリカだ。思い出した。
ニューヨークのギャラリーを周って見た作品は刺激的だった。創作に没頭して近づきたいと願った。その甲斐あってチフミの言葉のおかげで制作は次のステージにレベルアップした。
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先の展望も見えてきた。これから日本は不景気と不穏な空気が漂う時代に突入するだろう。既にインターネットでは参院選を巡り争いが始まっている。ぼくは政治が解決策ではないと考えている。人間が人間であることを忘れつつあることが根底にある。日本の問題は宗教がないことだ。なぜなら依るべきところがないからフラフラしてしまう。お金しか信用できなくなる。愛を言葉にできなくなる。だからと言って宗教を主張するつもりもない。

さらにこれから「生きること」忘れられていく。だからこそ生きる芸術であり、一回転して「生きる技術」をテーマにしたくなった。ぼくが中学生や高校生だった頃、音楽から生き方を学んだ。目の前に手本は見当たらなかった。

宗教がないから依るべきところがなく、結局の信じるところは自分だった。浅野忠信がハードコアバンドで歌っていた。ラッパーのNasが「world is yours」と歌っていた。「You can make it if realy you want」とJimmy Criffが歌っていた。

スーフィズムの真義は己を信仰すること、と何かの本で読んだ。こうして日記を書くのも己の声を聞き、過ごした時間を俯瞰するためのシステム。これはスーフィズムをオートマティックに実践する技術だ。

こうやって書き続けてきた日記も、いくつかのWEBマガジンでの連載も、書くことの特訓になった。
次のステージが見えてきた。「生きる技術」というタイトルの本を企画しよう。5~6人のオリジナリティ高い仕事の仕方をしている人のインタビュー。目的は10代後半から20代に届けること。マーケット的にも裾野が広い。

ニューヨークで過ごしながら次第に東京での展開が浮んできた。空き家で展開した方法で都内の空きビルにリーチしたい。

空きビルの一室をギャラリーにしてイベントを開催する。開催は土日の2日間。空きビルの部屋を告知するコンテンツとして低価格もしくは無料で借りる。電気はソーラーパネルで賄う。その電力の部分を友人の会社に依頼する。飲料はメーカーに物品提供してもらう。すべてを無料で実現するミラクルを考案したい。協賛イベントとして企業から予算を貰うのがベスト。それでウィン&ウィンの図式をつくりたい。

夏は三重県志摩の安乗で過ごしたい。2週間。家賃1万円。漁師の取材をしながら、海の漂着物で野外作品をつくりたい。「生きる技術」の連載企画をどこかのweb magazineに持ち込む。同時に森さんに出版の相談をする。そんな計画が制作しながら浮かんできた。

I’M NOT HERE

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朝からオススメのセントラルパークへ。頭の中には制作中の作品たちがチラつく。イメージを捕らえたと思っても目の前に現れた途端、次の理想に姿を変える。
公園を歩いているとジューイッシュ美術館を発見。オープンが11時なので入り口から様子を覗いて、メトロポリタン美術館へ。

世界中の至宝を集めた巨大な美術館のエントランスで、入場料25ドルを2人で足したら5000円、だったら絵の具を買いたいと、入場を諦め中の本屋でイメージを物色。

絵の具を買うために地下鉄で移動。ブロードウェイを歩くうちにホームセンターを発見。絵の具は白があれば、あとは薄める量で調節できる。10ドルのペンキと7ドルの12色のアクリル絵の具セット、漆喰=プラスターを購入。これで材料はほぼ揃った。

ニューヨークでいくつもの作品を見てハッキリしてきた。
主題が明確であること。つまりシンプルさ。色の組み合わせ。線や色の描き方や塗り方、仕上げ方。それらの総合点で美しさが変わる。言葉にすれば簡単だが、実現するには相応の技術が必要。自分の場合は偶然性にその可能性を託している。その偶然性をどれだけコントロールできるのか。画面はシンプルになるほど難しいパフォーマンスになる。偶然に委ねるから結果はやってみないと分からない。

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あと少しあと少しとアート作品のクオリティーを追求する日々。ニューヨークに来て、もっと仕事をしたいと思うようになった。つまり、経済社会で貨幣を獲得し、その価値を理想とする社会へと投入する。貨幣が社会をつくる血液ならば自分がハブになるべきだ。それもまた社会彫刻のひとつ。

理想的な暮らしや社会をつくるのと、目の前に理想的な絵画をつくるのは同じ作業かもしれない。何度もトライして理想に近づきながら軌道修正して未だ見たことのない理想へと接近する。それはカフカの城のように永遠と思えるほどに接近できないのかもしれない。その幻想自体がアートなのかもしれない。

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ニューヨーク・マンハッタン・チェルシー

制作に没頭する日々。最高だ。子供の頃から時間を忘れて夢中になることが大好きで、どうしてそうやって生きていけないのか疑問だった。でも、アーティストであればそれが許される。その代わり、日本のサラリーマン以上に制作に集中してやる。そう思う。

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ニューヨークに来て2週間が過ぎて、バルセロナの友達が紹介してくれたニューヨークの友達がチェルシーのギャラリー街を案内してくれた。ニューヨークのギャラリー街は、毎週木曜日どこかでオープニングをやっていて人が集まる。ビールが無料で飲める。だから、どんどん人が集まる。

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そんな勢いの呑み込まれ、アートを鑑賞した。とても刺激になったし、世界のアートトレンドをこの場所がつくっていると思うと、更にヤル気に溢れてくる。

5~6軒のギャラリーを見て、友達チェッラの知り合いが、やっている展示を見るためにタクシーで移動。ニューヨーク、マンハッタン。

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そこで分かれて制作のために帰宅することに。地下鉄に乗る前にゴミを拾った。

やるべきことはアート。納得のいく突き抜けたアート作品をつくること。その時間があって没頭できる。そんな幸せはない。

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見たことのない景色を求める旅人になる日

制作日。朝起きたらレゲエの曲が頭の中で流れていた。制作に集中している時は、ニューヨークもザンビアもイタリアも日本も何処も同じで、見える世界は作品のなかだけ。

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最初にイメージがあってつくり始めるが、嫁と2人で話し合いながら作る行程は、まったく予想外の展開をする。最初のイメージ通りになったとしても未だ見たことのない景色を求めてしまう。
作品という未だ見たことのない領域をいつも創造しようとしている。それは突然に達成されることではなく、いくつもの試行を重ねて、ある日やってくる。ひとつひとつが美しさを画面に宿すように心掛けている先に。でもその領域に自力では踏み入れることができない。自力では執着心や狙いが強過ぎる。それを壊してくれるのが嫁だったり偶然という外的要因。

今の制作スタイルはミニマルアートと呼べる。作品のシンプルさではなく、制作環境のシンプルさ。その極限状態としての。
あれがない、これがない、と探しているうちは、まだ作品世界の入り口に立っているだけで、中に入れば、身の回りにある材料で、その世界を開拓していく。
何のために絵を描いているのか。これもまたミニマルだ。絵描いている限りは、一切の欲が鎮まる。ぼくはただ見たことのない景色を求める旅人になる。

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あるとき、気の狂った先輩が海行った話しをしてくれた。その最後に「頭の中で海に行ったんだけどね。昨日は家から一歩も出てないから。」と付け加えたのを思い出した。

 

1・2・3・4 時代を変えるためのメッセージ

東京から選挙に関しての詩をラップで送ってくれ、と親友からのメッセージ。やらねば、と昨晩寝ながら歌詞をつくった。原案は親友の映像作家の木村がつくって、それを翻訳してラップにする作業。翌朝、起きて、走りながらラップを考え、トラックにする曲を選んで。夢中で走っていると、道を間違え、遠くに来てしまった。

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1時間30分の散歩+ランニングから歌詞の言葉を磨いてiphoneのボイスメモで録音すること8回。ベストなテイクを完成とした。

インターネットを通じて、日本の様子を知る。参院選について。ぼくはアメリカにいて何もできない。だから親友のオファーに応えたかった。

Sakkaku - SAKKAKU選挙ムービー第2弾。今ならまだ未来は選べます。投票に行って進みたい未来を選びましょう❗ | Facebook

午後からは制作。作品の精度を上げたい。まだ見ぬクライアントに気に入って貰うために。創造性への挑戦として。まだまだ旅は始まって1/4。

夕方、近所の図書館でついにwifiをゲット。溜まっていたブログをアップして気分がすっきりした。ブログは自分の活動を俯瞰する眼差しであり、対話して自分の声を聞くメディテーション
夕飯前にと作業を始め、片付けながら1階のAl氏と立ち話。セントラルパークを激オススメしてくれる。Al氏はトリニダードトバゴの出身だと教えてくれた。この界隈は、カリブ海移民の地域らしい。
「この辺は平和だよ、教会も目の前だしね。」と話してくれた。

世界中を旅して、それぞれの暮らし方を吸収しながらアート作品を発表して、それが時代のトレンドで飛ぶように売れて、なんて夢を見ている。世界を視野に制作を続けている。バカみたいに。でも、そんな展開になるように動いていない自分がいる。

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ブログを更新して、この数日の展開が俯瞰できてヤル気になった。毎日の生活が作品。こうして記録することがやがて人生を作品に、仕上げてくれる。