いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

見たことのない景色を求める旅人になる日

制作日。朝起きたらレゲエの曲が頭の中で流れていた。制作に集中している時は、ニューヨークもザンビアもイタリアも日本も何処も同じで、見える世界は作品のなかだけ。

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最初にイメージがあってつくり始めるが、嫁と2人で話し合いながら作る行程は、まったく予想外の展開をする。最初のイメージ通りになったとしても未だ見たことのない景色を求めてしまう。
作品という未だ見たことのない領域をいつも創造しようとしている。それは突然に達成されることではなく、いくつもの試行を重ねて、ある日やってくる。ひとつひとつが美しさを画面に宿すように心掛けている先に。でもその領域に自力では踏み入れることができない。自力では執着心や狙いが強過ぎる。それを壊してくれるのが嫁だったり偶然という外的要因。

今の制作スタイルはミニマルアートと呼べる。作品のシンプルさではなく、制作環境のシンプルさ。その極限状態としての。
あれがない、これがない、と探しているうちは、まだ作品世界の入り口に立っているだけで、中に入れば、身の回りにある材料で、その世界を開拓していく。
何のために絵を描いているのか。これもまたミニマルだ。絵描いている限りは、一切の欲が鎮まる。ぼくはただ見たことのない景色を求める旅人になる。

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あるとき、気の狂った先輩が海行った話しをしてくれた。その最後に「頭の中で海に行ったんだけどね。昨日は家から一歩も出てないから。」と付け加えたのを思い出した。