生活と芸術。今朝は6時に目が覚めた。パンとコーヒーを用意して畑にいる妻を呼んだ。妻は犬の散歩のために5時ころから起きている。
朝食を済ませて、トラクターを動かして、花畑を耕した。木曜日に特別支援学校の高校生たちが、コスモスの種蒔きに来てくれる。その準備をした。今年は6月下旬に梅雨が明けて、すでに夏の暑さ。だから毎日、早起きして景観づくりの外仕事をしている。朝早くないと太陽の暑さに負けてしまう。午後を制作に充てることができるメリットもある。
午後は、北海道の雪景色の絵の額をつくることにした。この絵は、札幌南区の廃屋に雪が積もって、いつの時代か分からない景色に惹かれて絵にした。札幌南区の神社改修の仕事で、この廃屋から廃材を頂いて、神社改修の材料にしたりもした。神社と廃屋は同じ持ちで了承を得ている。
その廃屋で木材を漁ったときに、いくつか使えそうな柱や板を別の場所に移しておいた。板には昭和16年と書いてあった。そのうちに廃屋は崩れてしまって、今は家のカタチを留めていない。描いたときはカタチがあったものが、いまは失われて、この絵自体が現在進行形から過去へと、時空を移してしまった。
改めて絵を眺めると、建物が昭和10年代だから、雪が積もってしまえば、きっとこれは、当時の景色なのかもしれない、とさえ感じた。数年前に額を作ろうと、この景色の家の廃材をアトリエまで運んで帰ってきたことがある。わざわざ飛行機で。絵画の風景は失われて、その廃材で額が作られている、だからどうだ、ということでもないのかもしれないけれど、その実在と不在のコントラストが面白いと感じる。いま13時。というわけで額をつくる。
額を作っていたら、近所のおじいさんが来て、札幌から持ってきた古材を見て、このスキーは貴重だな、初めてみたよ、取っておきな、と言われた。額の部品にしようと思うと説明したら、それはダメだと言われた。こういう出来事が制作に影響して、想像したもののカタチが変わる。会話や人との出会いも作品の一部になる。ぼくはその意外性を楽しむ。残った廃材で額を作った。15時が過ぎて、いよいよ暑くなってきて、温泉に入りたくなった。海にも入りたい。妻に海に寄って温泉を汲んでくると声を掛けて出掛けた。
海の状態は、南風で引き潮から上がっていくところ。風は微かで波情報によると1mぐらい。予想としてはちょうどいい。目当ての海に着くと波はなかった。どうしようか考えたとき、サーファーのトオルくんの言葉を思い出した。「何周もまわって、やっぱりパドリングが基本なんですよね、だからぼくは波なくても海入ります」
上手い人がそうしているのだから、入るしかない。ウェットスーツを着たりボードを準備するうちに、少しだけ波が立ちはじめた。これはチャンス。海に入ると冷たいけれど気持ちいい。パドリングして波があるポイントで待っていると、ちょうどいいタイミングが来た。乗れた。今までで一番良かった。そのあとは海に浮いているだけで満足だった。1時間で切り上げ、温泉を汲みに向かった。
現在88歳のおじいさんが掘った温泉は、非営利で運営されている。商売じゃないから、宣伝もないし営業もしない。知っている人だけが汲んだり浸かりに来る。このおじいさんには真菰栽培を教えてもらって、トラクターを貰って、薪割り機を借りてて、山ほどお世話になっている師匠のひとり。温泉を汲んだついでに師匠に個展の案内を渡すと、お土産にコーラを二本くれた。自分が88歳まで生きられるかも分からないし、万が一その年齢になったら、このおじいさんの超人さに驚愕するだろう。尊敬している。
家に帰って温泉の入ったタンクを浴槽に移して、薪を焚いて風呂を沸かした。夕食を済ませて入った風呂は特別だった。海に入ったあとだからか、この温泉が包み込むような効果があった。身体がスベスベになった気がした。生活のすべてが便利になってしまったらすべてが商品やサービスに埋め尽くされる。それより欠けている不便さのなかで工夫したり身体を動かして満たす方が豊かに思う。
風呂のあとは紙漉きをした。妻が帽子をつくりたいとの願いで去年から取り組んでいる。自作の和紙。自然からできる帽子。もう21時にはクタクタに疲れて、これを書いて寝ることにした。充実した1日。今日も1日、自分を作品をつくり、生きた。
いつも読んでくれてありがとうございます。
年に一回ぐらいのペースで開催する
個展のお知らせです。
檻之汰鷲 個展
7月19日(土)〜27日(日)
ギャラリーいわき
open 11:00〜19:00
*水曜日は定休日
常磐線 泉駅から
タクシーで10分
徒歩30分
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