いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

自然を読む。火星より地球に暮らしたい

カヌーを取りにチフミの実家、岡谷市に行った。この週末は、チフミが先に実家に帰っていたので、ひとりで次の本の原稿を書く作業に没頭した。全部で5部構成、4部まで原稿は仕上がった。あと少し。新たに北茨城市での活動を書き下ろして完成する。この本は、ぼくら夫婦が生活を作る冒険譚。なぜ生活を冒険するのかと言えば、ぼくたちは管理された「安心安全」と言われる世界に定住していて、しかし、それが本当に幸せなのか、とぼくは疑問に思う。

絶対の安全などありえないのだから、ありえない世界に定住しているとも言える。そして、その世界から外に出れば、リスクに対する責任が発生する。そのリスクとは自然と向き合うこと。安心安全か分からない場所で生きること。自然の中で生きることは不安定極まりない。重労働を要求されるし苦労が絶えない。そうした環境から脱出したかった前の世代。それが戦後の高度経済成長だった。しかし、その成長の先に辿り着いたのが、今現在の日本。ありえない世界=自然から切り離された安心安全快適な社会。海も森も川も生活に関係のない世界。これが理想の世界なのだろうか?

ぼくたち夫婦は理想の暮らしを作るために3年間、日常生活を冒険してきた。複雑に絡み合う社会問題と理想の狭間。空き家から空き家へ。高いところから低いところへ。流れる水のように。当たり前の日常を常識とは異なるレイヤーで地方を漂泊した。ぼくはリスクを取る。なぜならまだ答えを出すの早くないか?たかだか50年100年の常識に縛られるなんて。ぼくの人生で実験してみれば、常識の悪いを良いに変えられるかもしれない。可能性を次の世代に残したい。誰かが線を引いたルールの中で生活していても、何も変わらない。生活が変われば目の前が変わる。目の前が変われば周りが変わる。自分を中心に世界を変える試み。「生きるための芸術2」

これが次に出版する予定の本。冬頃リリース。告知です。第一巻はこちらhttp://ur2.link/LCKc

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カヌーを6時間かけて、岡谷市から北茨城市に運んで、夕方、北茨城の仙人こと山崎さんが、ブルーベリーを摘みにおいで、と誘ってくれたので寄り道。今日は天気がいいから星を見ようという話になって、山崎さんがDIYした天体望遠鏡を動かしてくれた。反射鏡は1メートルあって、2年かけて磨いたそうだ。

日が暮れてくると月が現れた。山崎さんは、月に照準を合わせる。月を見る。鮮明にクレーターが確認できた。次に火星を見た。距離が遠くて、星がぶれる。条件がよければ火星の模様が見えるらしい。ぼくは経験したことからしか興味を持つことができないらしい。今まで天体について本を読んだりしたけれど、実感が湧かなかった。けれど、火星が目の前に輝いているのである。それは一体どんな現象なんだろうか、と思った。

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火星は、最接近したときで、地球から7528万キロメートル離れている。徒歩で1000年、車で30年、音速のジェット機で5年かかる。そして宇宙船ですら5~6ヶ月。

火星は、これまで人類の想像力を刺激してきた。火星は金星の次に地球から近い惑星で、2040年には火星への移住が計画されているなんて話もある。けれど、火星に移住を考えるよりも、この地球に快適に暮らす方法を再検討した方がずっといいと思う。まだ間に合うと思う。大地にへばりついて生きている人間は、ほんの少しだけ大地から軽くなることができる。それが想像力だ。イメージがあれば、ほんの少しだけ楽しい未来に期待を持てる。

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山崎さんは、70歳を過ぎてから天体望遠鏡を作りはじめた。82歳のいま、現在進行形で、超新星を探している。山崎さんは、生きる意味を残そうとしている。1000ページに及ぶ自分史も執筆中だ。

 2018年は、宇宙が題材に小説や漫画がたくさん描かれた1960年代や70年代からすれば、ずっと未来の世界だ。今ぼくたちが暮らす時代のこの環境で、便利と不便と、自然と安全安心の快適さの間にどんな理想の生活空間を作ることができるのか。経済成長は、とっくに破綻した理想だと思う。ぼくは、日本のすべてを知っているわけではないけれど、今ぼくが暮らす北茨城市には山も海もあって、その間に人々の生活があって。この環境で理想とする暮らしを作る、それぐらいのことは、2040年に火星に移住する計画より簡単だと思う。目の前に資源はあるのだから。ぼくたちはどう生きるのか。