いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

One of these days 43

朝、東京から北茨城に帰って、昼から芸術祭のミーティング。その前にランチを食べにお気に入りのお店に。1000円で地元産の魚が食べれる大津港駅の「太信」へ。

その土地で漁れたモノを食べれば、それは間違いなく美味しい。店主のマエダさんに「美味い」と言ったら、ほかのお客さんも「ほんとうに美味しい」と言って、食べているみんなで「本当に美味しいですね」と会話が生まれた。マエダさんが、大津港の市場に一緒に行きますかと誘ってくれた。きっとマエダさんと一緒にいったら楽しい。

芸術祭のミーティングには、北茨城に暮らす芸術家が集まる。ここには、表現で生きてきたヒトたちがいる。生きる芸術家たち。その話しのひとつひとつが参考になる。

陶芸家で仙人のような真木さんは、南米のジャングルに土地を持っていて、滞在制作したければ、いけばできるよ、と誘ってくれた。嘘のような本当の話。いろんな作家の展示に足を運んで、営業するのも大切。そういう場所から、次の展示が決まったりするとアドバイスをくれた。

日本画を描く小板橋さんと初めて話す。北茨城のあちこちに小板橋さんの絵が飾ってあり、地域に愛されている作家だ。淡い色で海や森など日本の自然風景を描く。イタリアの景色を描く毛利さんの個展が、水戸の百貨店で開催されていると奥さんがチラシをくれた。真木さんのアドバイスに従って、月曜日に行ってみることにした。

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芸術祭のミーティングのあと、また車で東京に向かう。高速道路で2時間30分。20代一緒に遊んだ和田くんがオーストラリアから日本に帰ってくる。新宿の居酒屋で再会。

和田くんは、オーストラリアでマッサージをしている。マッサージではないかもしれない。ヒーリング、トリートメント、カウンセリング、いろいろミックスされている。要するにヒトの状態を調整する仕事をしている。

むかしからの遊び仲間でバンドのメンバーでもある宮下くんと、妻のチカちゃんも一緒に飲む。

話題の多くは仕事について。和田くんは、オーストラリアでお店を経営して従業員を雇っている。宮下くんは、大手it会社でWEBをつくって、部下を持っている。チカちゃんは、最近、ネイリストとしてデビューした。

和田くんは、いかに自由な時間を手に入れるかを考えている。
自由な時間をつくって海でサーフィンをしていたんだ。波のりは、人生をつくることに似ている。人生のチャンスも波のようにやってくる。乗れる波、乗れない波。それをキャッチできるか。だからサーフィンは楽しい」

オーストラリアと日本の違いについて話した。オーストラリアは、戦争をしたことがない。巻き込まれたこともない。緩やかに経済成長を続けている。だから、底抜けに明るく。ポジティブ。

日本は、戦争に負けて、高度成長を遂げたが、バブルが崩壊して、いくつもの大震災と原発事故。中国や北朝鮮、アメリカとの均衡。東京の混雑、スピード、働き過ぎ、満員電車。日本人は、苦しんでいる。哀しみを感じている。

和田くんは、日本にも仕事のネットワークをつくりたいと話した。いろんな国に仕事のネットワークをつくれば、その国のよい面を吸収できる。国籍・民族などにとらわれず、世界的視野と行動力とを持ちたい。世界人。国際人。コスモポリタン。共感する。ぼくは日本に和田くんのネットワークをつくりたい。役に立ちたい。和田くんは、ぼくの絵をオーストラリアのお店で展示販売してくれると約束した

チカちゃんは、ネイリストとしてデビューして、価格をどうするか考えていた。モノをつくると売るは対になっている。昼間の芸術祭のミーティングで真木さんは「売ることは作家として生きること」と教えてくれた。和田くんは、値段は高い方がいいとアドバイスした。経済力を自分が持てば、おカネがないひとを助けることができる。値段を安くすれば、おカネがないヒトがビジネスの対象になる。宮下くんが「鼠小僧スタイルだね」とまとめた。

宮下くんは、楽器を弾き続けている。普段はギターを弾いている。一緒にやるバンドではベースを弾いている。宮下くんは音楽をつくるけれど自信がないという。和田くんは、自信は自分が持つものだとアドバイスした。

尊敬する浅野忠信は「おまえがおまえを信じないで誰がおまえを信じる?」と彼のバンドで歌う。ぼくはこの言葉を大切に心に刻んでいる。音楽は、その歌詞は、生きる勇気を与えてくれる。

それぞれの想いを言葉にして、語り合い、助け合いのパスを出して、自分を知るヒトと価値を交換して生きていけたら、豊かな暮らしがつくれる。

和田くんが仕事で日本に来れるようになって、チカちゃんのネイルが売れて、宮下くんのつくる曲が素晴らしくなればいい。

テーブルを囲んだみんなと結局のところ「海の近くに暮らしたい」という話になった。海だ。やっぱり海だ。

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生きるための芸術
檻之汰鷲(おりのたわし)
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