いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

One of these days 41

あなたの仕事は、王国を繁栄に導くこと。どのような生態的環境、人口構成、地理的条件の組み合わせが国家と支配者にとって最も好ましいかという匙加減はあなた次第だ。

 朝起きて、ページをめくった本「ゾミア-脱国家の世界史」の一節。

この本は、原始的な民族が、わざわざその生活習慣を選ぶことで、国家の束縛を逃れていることを明らかにしている。つまり、定住しなかったり、文字を持たなかったり、粗末な食事をしているのは、遅れているのではなく、権力から自由になるための戦略だという。

週末友達の結婚式があるので、未完成のペンギンと道具を車に乗せて、出発。一カ月に一回くらいのペースで東京いく。片道高速で2時間半。

夕方、六本木のミッドタウンで、岐阜のBLUE MOUNTAIN VILLAGE(通称ブルマン)の青山くんに会う。お互いの近況を報告し合う。

ブルマンは、岐阜県中津川市の森のある古民家。青山くんのお婆さんの家。2016年の冬、空き家を巡って旅をしていたぼくら夫婦は、この家に暮らしていた。2015年に知り合い、それから家と森の再生を共に計画してきた。ここで森のことを知るようになった。
青山くんは、いくつもの仕事をしている。そのひとつに今年から「馬籠ふるさと学校(https://gifu-magome.jp/about/)」に携わっている。今日のミーティングは、そこでアートを使ったイベントや取り組みができないか、という相談だった。ぼくはお返しに「きらめ樹(木を立ったまま皮を剥く間伐方法)」の話しをした。


ミーティングのあと、六本木から代官山蔦屋に移動。先月アメリカのボストンにいったとき、アートマガジンを買いたかったけれど、滞在したプロビンスタウンが田舎なのか一冊も売ってなかったので、モノが集まる東京なら、と足を運んでみたけれど、蔦屋にも数が少なかった。やっぱりアートの需要がないのか。チフミに見せたい作品が掲載されていたので、ガゴシアンギャラリーのカタログ雑誌を買った。ガゴシアンは、現代アートを扱う皇帝画商と呼ばれるほどの有名ギャラリー。

どんな人が展示しているのか調べたら、アンディー・ウォーホールダミアン・ハーストジャスパー・ジョーンズ村上隆草間彌生など。そこに2013年に新たに所属した「石田徹也」という名前をみつけた。知らなかったので更に調べてみると2005年に亡くなっていた。生前は、作品で生計が立たず、アルバイトをしていたそうだ。

知らないことを調べると新しい発見がある。画商に興味が湧く。

夜寝る前にゾミアの続きを読む。

国家の仕事は、理想的な収奪の空間をデザインすること。どうれば最小限のコストで、安定的で十分な労働力と穀物の余剰を確保できるか。ポイントは、耕作地と民をどれだけ中心に集めることができるか。つまり都市は、国家にとって、理想的な収奪空間としてデザインされている。

ゾミア的な発想をすれば、ボロい服を着て、オシャレな場所に足も運ばず、鄙びた小屋のような家に、誰も住みたくないような場所に暮らすこと。敢えて、それを選び取ることもできる。なんにしても匙加減は自分次第だ。

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