いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

海や川や湖の水の文化圏を忘れた現代に、開かれた自然と自由がここにある。

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2013年、バルセロナアイルランドのカラックに出会い、すっかり惚れてしまい、それからずっと舟をつくりたかった。カラックをつくっていたアーティストのMark Reddenに影響を受けて、木工をやりたいと思った。Markの憧れは日本の大工で、ぼくはその匠さを知らなかった。

2014年春に空き家を探して、家を改修して舟をつくる技術を身につけることを計画した。それから2年近くが経ち、今年のお正月に嫁の実家で、舟をつくりたいなら、諏訪湖に「手づくりカヌーの会」があるぞ、とお義父さんが教えてくれた。ネットで検索するとfacebookページがあり、問い合わせ、ついに今日、下見を兼ねて会うことになった。

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諏訪湖で待ち合わせして現場に行くと、あるあるカヌーが。これはカヤックだ。会長の寺田さんと合流し、作業場兼集会所に案内してもらった。

そこで88歳元会長の伊藤さんに出会った。手づくりカヌーの会は、自然との共生をテーマに、諏訪湖の清掃もしている。伊藤さんが10年前に孫が学校の行事で、クラスで手づくりの舟をつくって大会に出場する直前に折れてしまい、相談されて直したこときっかけに舟に出会う。ちなみに、孫のクラスは、その大会で優勝したらしい。

伊藤さんは、孫の舟を修理しったことで舟に興味を持ち、手づくりのカヤックを自作した。知り合いだった現会長で学生時代にカヤックをやっていた寺田さんが合流して、会が発足した。

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伊藤さんは、「88歳でもう足腰がつらいので、君のが最期のボートだ。設計図もないから、ぼくはみんなにそのやり方を直接教えてる。材料を買ってきて、つくって漕ぐまで、一緒にやろう。」と言ってくれた。

探し求めていた場所がここにあった。
手づくりカヌーの会は、いろんな場所に行って遊んでいる。東京の隅田川や、お台場も漕いできたらしい。海や川や湖で舟を漕ぐのに規制はなく、自分で舟を浮かべれば、そこは自然の世界が広がっている。いつの間には、人間は都市へと接近して、自然から離れていった。水に近づくひとは激減している。その代わりに、海や川や湖への想いを失っている。

伊藤さんは言った。
「諏訪の真ん中は諏訪湖だよ。だけど人間は、その周りにへばりつくように暮らして、大切にするどころか、汚してしまった。わたしは、諏訪湖を自分のものにしたい。」と。山があるから登る、そんな登山家のような気持ちだ。

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舟がやってきた。追い続ければ夢は叶う。夢は次の夢を運んできてくれる。津島で舟のある暮らしを再現してみたい。木曽川から海へいってみたい。
ぼくの未来は、日本文化のルネッサンスを目指している。

夫婦で作品をつくる
コラージュ・アーティスト
檻之汰鷲(おりのたわし)
http://orinotawashi.com/