いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

One of thesedays 64

 仕事を集めてみる。手元に手繰り寄せてみる。どれくらいあるんだろうか。ちょっとした会話の節々に、仕事の果実がぶら下がっているのをみつける。種を受け取ることもある。それは少し育てる必要がある。メールで飛び込んでくることもある。おカネが発生するのか分からないこともある。誰にも指示されないし、怒られることもないけれど、うっかりすると、収穫期を逃したり、頼まれていることに気がつかなかったり、イタズラに時間が過ぎてしまうことがある。忘れていることもある。だから宮本武蔵五輪書の教え「無駄なことをしない」を思い出しては、仕事をみつけて育てている。

 

絵を描く。デザインする。イベントをやる。森に入る。畑をやる。文章を書く。家を直す。どれも、ひとりでやることもできるけれど、届ける相手がいるだけで、喜びは何百倍にも増える。

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午前中は絵を描いた。二ツ島の景色に毎日少しずつ手を入れているけれど、納得できる地点まではまだ遠い。美しい景色を探している。描けばいいという訳でもなく、空白だったり同じ色の繰り返しだったり、色とカタチのハーモニーを探している。絵の世界を旅しながら、つくることを思考する。それはいろんな仕事に通じている。その逆もある。畑仕事が絵に影響を与えるし、遊びに行くこともまた創作活動のひとつとも言える。

 

午後、フジロックフェスティバルのTシャツをデザインしながら、甘いものを食べたいとチフミと話していると、来客があった。お隣、いわき市に住むナオトさんが、スウィーツを差し入れしてくれ、作品を入れ替えたばかりのギャラリーの絵を鑑賞してくれ

「わあ!綺麗!」と感嘆の声をあげてくれた。

 

スウィーツを頂きながら、世間話やお互いの話をする。ぼくは東京での出来事を話をした。

エスカレーターで、左側は立ち止まって列に並ぶ、急いでいるヒトは右を進む、という暗黙の了解があって。ぼくら右が空いてるときは、どんどん前に進むタイプですが、たまにお年寄りが右にいて進めないときは、左に寄って空くのを待つんですね。そしたら後ろから舌打ちが聞こえて。進むなら進めよ、って言ってるんですよ。進めないから、左に寄ってるのに。そのヒトこそ先に進めばいいのに、ぼくの後ろにぴったり付いて怒ってる。怖いですね。イライラして。だから、フェイントをかけて、先に行ってもらったら、スゴい睨んできて邪魔なんだよ、と呟いたんですよ。前に進めないのが嫌なんじゃなくて、ぼくの動き方が気にいらなかったんでしょうね」

 「人間がイライラしてますね。なんというか、質が低下しているというか」

 「東京から、北茨城のアトリエに戻ると思うんですよ。疎開しているんだなと」

 「SNSなんかは怒ってるひとばかっりですものね。だから、ぼくは絵を鑑賞したり、本を読むのが好きなんです」ナオトさんが言った。

 会話は鏡だと思う。会話のキャッチボールをしているとき、お互いが似たことを言っている。自分の言葉が相手の発した言葉のようで、その逆もある。

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メールをチェックすると、ネットで問い合わせていた中古サーフボードが買えるとの連絡がきた。6500円。筑西市のホームセンターが引き渡し場所になったので高速を走らせた。100km1時間30分。ついにサーフボード を手に入れた。親切なひとで、ワックスとサーフボード と足を繋ぐコードもつけてくれた。

帰宅して夜中まで、デザインをしたけれど、イメージが出てこない。ロックな生活をしてないからイメージが湧いてこない。音楽を聴いたり、ネットを検索したり、雑誌をめくったり、イメージを耕すのに時間を費やした。明日は仕上げる。海で波と遊ぶ。