いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

One of thesedays 57

小学校の運動会にいった。チフミとぼくには子供がいない。だから、子供のことはよく分からない。けれど、チフミの姉の子供たち、りゅうのすけ、りなこ、甥っ子と姪っ子が、子供について教えてくれる。彼らと過ごすことで。

小学校の運動会を観覧しながら、自分のころを思い出す。学校は、ひとつの完結した世界だった。先生は先生だし、勉強は仕事だったし、列を乱すことは、ルール違反だし、話をよく聞く子がいい子だった。子供同士の世界のバランスがあって、イジメや小さな暴力や。

「全体止まれ!前へ倣へ!休め!」
改めて、運動会という行事は、軍隊みたいだな、と思った。

足が速い子もいれば遅い子もいる。ぼくは足は速くなかった。4位とか5位だったと思う。りゅうのすけは、小学一年生で、短距離走で1位になりたいと思っている。

「ノリ応援してね!ぼく頑張るから」
でも勝負の世界は厳しい。りゅうのすけは3位だった。僅かの差で。

学校って何だろうかと思う。社会なんだと思う。学校で感じたことが、ぼくの人生のはじまりなんだと思う。運動は苦手だな、とか勉強が好きじゃないとか。学校に好きなことがなければ、外にあるかもしれない。でも、それは誰も教えてくれない。

 

ぼくは、勉強もスポーツも得意じゃなかった。大学を卒業しても、何もうまくいかなかった。ぼくは、音楽が好きなのに、楽器も弾けないし、歌もヘタで、CDやレコードばかりを集めていた。いつも、社会は生きにくい場所だと感じていた。

けれども、大好きな音楽は、同じ気持ちの友達や先輩に引き合わせてくれた。自分を変える必要がないことを知って、居場所をみつけ、生きるのがずっと楽しくなった。

りゅうのすけは、勉強が嫌い。
りゅうのすけは、恐竜が好き。
名前もたくさん覚えている。男の子だから、相撲みたいな恐竜ごっこをやりたがる。ぼくに勝てるはずないけど、負けると悔しがる。
りゅうのすけは、アマゾンに昆虫の調査に行きたいという夢を持っている。

ぼくは、りゅうのすけの叔父さんだから、もし学校に好きなことがなかったら、いろいろ教えてあげたいと思う。そんなつもりで、絵本も描きたいと思う。