いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

One of thesedays 48

知らないことをひとつ知ったとき、世界はひとつ大きくなる。知らないことが100あると気づいたなら、世界は100だけ大きくなれる。

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朝10時に市役所で2019年の国体パネルデザインの発表会に出席。そのあと図書館へ。本棚から背表紙の文字を眺めていると手が出る本がある。それがいまの自分の興味。図書館は自分を映す鏡だ。

図書館で「奇人変人大天才」を借りる。サブタイトルは、アリストテレスガリレオニュートン、ファラデー、その一生と研究。発見は、疑問からはじまる。実証、研究を繰り返し、答えをみつける。知っていることより、知らないことの方が多い。

昼。名刺をつくらなきゃ、作品のカタログ冊子をつくらなきゃ、と仕事をいろいろ思いつく。作品をつくる仕事と作品を売る仕事のふたつがある。「商人、交易」という言葉を思いつく。

アトリエに向かう途中に、新しいアトリエになる富士ヶ丘小学校へ荷物を取りに寄る。行き違った車が止まって「北茨城市の地域おこし協力隊のヒトですね?」と声を掛けられた。
いわき市でも地域おこし隊がいて、拠点づくりとかカフェをやるとか、いろいろやっているんですね。応援したいと思って、何か参考になればと声を掛けさせて頂きました」
という展開になったので「この学校から10分ほどに古民家を改修したアトリエがあるので寄っていきませんか」といわき市の田人出身の川崎さんに来てもらい話しをした。

 

川崎さんは、保険の会社を経営している。
「芸術って複雑ですね。理解できない作品も多いですね。わたしは作家がどうだこんなの分からないだろう?と胸を張るような作品は好きじゃないんです。例えば、白塗りしたヒトが踊るパフォーマンスを子供たちがみて泣いちゃうんですね。楽しませるという手段もあるのに。もっと子供もお年寄りも楽しめるアートがあったらいいですね」

助成金を受けてアートイベントをやる。助成金でアーティストが活動していく。それもいいのですが、作家が素晴らしい作品をつくって、その価値を理解できるヒトがパトロンになって、その活動を支えていく。その金額は決して安くないですよ。けれど、それだけ価値のある作品を作家はつくるべきなんですよ」

川崎さんは「田人町で8月にアートイベントがあるから、そのミーティングに今夜参加しませんか」と誘ってくれた。

時間はあるけれど、時間はない。あっという間に1日は過ぎる。夜、アートイベントのミーティングに出席するために田人町へ。20kmほどで30分。田人公民館に着くと、同世代の男女に入り口で遭遇。ミーティングに来たと話すと、会場まで案内してくれる。

ミーティングに来た経緯を話すと「アートミーティングは昨日だったんですよ。まあ、せっかく来たから、町の会議の様子を見ていってください」と席に案内された。

知らない町の会議は20人ほどで行われた。議題は、町で毎年開催されるイベントの話。6月にMOMOカフェなるお店が開催するフェスからの協力依頼の話。断層の見学会の報告。
入り口で会った男女はフェスを主催するカフェのオーナーとスタッフだった。女性は友達のトンカちゃんにソックリだった。どうりで、親近感が湧くわけだ。世界に3人は似ていてるヒトがいるというから、ありえる話。

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なかでも興味深い話だったのは
「こんにちは。竹内です。実は8年前に九輪草を30株分けてもらいまして。山に植えていたのですが、なかなか難しくて、それが夢中になってしまって、2万株まで増えまして、最近それが話題になって、というのも新聞の取材が来て、わたしの山に何千人も来るようになってしまって。けれども、駐車場もなければ道もない。見に来たヒトも困るし、わたしも困るし、近隣のヒトも困るしで、町に協力をして頂けないかと相談に来たのです」

横にいた奥さんが
「付け加えますと、主人が山で九輪草を育てるのは、苦労の連続でした。山の川から水を引っ張ってきたり、でも好きでやってることだから応援したくて。だから、今回も急遽、駐車場スペースをつくったりして対応しました。けれども、今度はNHKさんが取材に来るという話になって。そうしたら、駐車場はあるか、観光バスは入れるか、という話になって。そんなのわたしたちには到底無理です。道だって私道の山道ですから、観光資源として場所は公開提供したいと思いますので、どういう風にやっていけばいいのか知恵をお借りに来た次第なのです」

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帰りにチフミと話した。
「アートイベントのミーティングなかったけど、九輪草の話よかったね。"まちづくり"とか観光資源というけど、竹内さんみたいに、個人が好きでやっているうちに、つくってしまったような、積み重ねていくものがいいね。地道に続けていくことが大切だね。夢中になってやっていて、ふと顔を上げると世界が変わっていた、そういうのがいいね」

芸術で生きるために
檻之汰鷲(おりのたわし)
http://orinotawashi.com/