いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

One of these days 42

会いたいヒトがいる。聞きたい話しがある。行きたい場所がある。何が起こるか分からない日がある。

 9時。朝起きたらチフミは出掛けていた。ペンギンを仕上げるために、拾い集めてきた鉱物をハンマーで砕いて、目のサイズにする。ルーターで削って米粒みたいにした。

午後、髪を切りに原宿に。え、わざわざ原宿まで?と言われるけれど、わざわざ行く。"hair&make CALM"の荒武さんに切ってもらう。20年くらいになる。ぼくが絵を描くようになって、勇気を出してその話をすると「持ってきなよ」と飾ってくれた。そのときに絵は人目に触れて成長することを知った。

荒武さんは、物欲もあまりないし、SNSもやらない。スマホも持っていない。CALMという空間がすでにSNSなんだと思う。ぼくは荒武さんに近況を話す。まるでfacebookTwitterに投稿するみたいに。新武さんは「いいね。面白いね。楽しんでるね」と笑ってくれる。

CALMでイベントプロデューサーのMioちゃんと旦那でDJで編集者のSerizawa Naokiに会った。好きなことを仕事にして東京に暮らすナイス夫婦。毎年、フジロックで一緒に働いている。ミオちゃんが

「ノリオ、今日lilith遊びに来る?」と今夜のパーティーに誘ってくれた。久しぶりに遊びに行くことにした。

 

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夕方、高田馬場に移動して世界湯、銭湯にいった。東京で暮らしていたとき仕事の空き時間によく銭湯にいった。喫茶店なんかで時間を潰すより、リフレッシュできる。携帯を手放せるし、裸になるから、なにもないゼロの自分になれる。

高田馬場サイゼリヤに移動。愛知県で一緒に空き家再生した家主、水谷さんに会った。水谷さんは、愛知県津島市の長屋で、耐震補強工法を発明した。ぼくは、ここで空き家改修の技術をゼロから学んだ。

今夜の話題は2つ。

ひとつは、水谷さんが新しい耐震補強の工法を発明したこと。水谷さんは在野の博士だ。この新しい工法があれば、傾いた古い家にも住めるという。だから傾いた家を探しているとのこと。できれば都内で、再建築不可や、相続で困っているような、流通しない物件を探している。つまり、そんな物件どうするんだ?とか、危ないし無理だからやめておけという話。

けれども水谷さんは、できないことをやりたがる。ヒトができないことをやれば、そこに新しい市場が開拓できると考えている。そして「石を投げたい。波紋を起こして、常識を問いたいんです」という冒険者

もうひとつは、愛知県津島市の長屋ルミエールの改修を再開するにあたり、一緒に改修するひとを募集したい。未経験者が経験できる機会はあまりない。水谷さんは「1週間でも一カ月でも、津島に滞在して、一緒にやってくれるヒトを探している。ルミエールはとまり木だから、いろんなヒトがやってきて、成長し旅立ってくれたら嬉しい」と話した。泊まる場所と一日数千円の日当も保証されるので、古い木造住宅の改修技術を身につけたいヒト連絡ください。できれば何かをつくっている若いヒトがよいそうです。

11時過ぎまで話して、板橋の家に帰宅。車に乗り換えて、渋谷へ。パーティーlilithに行く約束だ。着いたら1時。なかに入るとアーティストのR領域ことダミに会う。今夜の会場装飾を手掛けいる。デコレーションという表現手法。20代のころに出会って、ダミはそのときからアーティストだ。尊敬する仲間。スクラップや廃品をコラージュしてフジロックのステージの装飾をするほど巨大な作品をつくる。彼ほどスケールの大きな作品をつくるヒトを他に知らない。

「今年の夏は、ヨーロッパを周ろうと思って。オーストラリアやアメリカでは、デコレーションやってきたけど、まだヨーロッパはなかったから。あと旅もしたいしね」

ぼくの知ってるピュアな表現者。ダミから学んだことも多い。

会場をウロウロしてると、ブライアンに出会った。先輩であり親友であり、ボスであり、まるで兄ような。ぼくのキャリアはブライアンのアシスタントから始まった。出会いもパーティーだった。25歳のころ。

ブライアンと近況を話してフジロックの打ち合わせをした。ブライアンはずっとフジロックのサイトをプロデュースしている。ぼくも一緒に仕事してきた。いまは、少しだけ参加している。久しぶりに昔のように今年はこんな風にしようとか、あんなアーティストを呼ぼうとか、話し合った。

話しをしながら、もっと大きくなりたいと思った。自分が経済的に成長できれば、周りの仲間に貢献できる。実際に仕事で成功して、助けてくれる友達もいる。見習いたい。

明日、北茨城で打ち合わせがあるので、深夜2時に会場を出て北茨城に向かう。景色が夜から朝に変わっていく。北茨城に近づくにつれて、空が広くなっていく。ぼくは、この空が好きだ。なんて素敵な色になっていくんだろう。ゆっくりとピンク色の朝焼けに変わっていく空。

 何十億という人間が世界中に生きていて、そのほとんどと、なんの繋がりもないけれど、その数パーセントにも満たない、今まで出会ったヒトが、ぼくを知っている。どうして、出会うのか分からないけれど、そのヒトたちとの出会いが、ぼくを知っているヒトたちが、ぼくの世界をつくっている。

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