いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

One of these days 29

4月27日金曜日

作品が完成してきたので、ギャラリーに作品を持っていった。数日前に立ち寄ったギャラリーが「作品を見るよ」と言ってくれたので、持っていくと接客中で、また「夕方にきて」と言われる。

2軒目のギャラリーは「2年後まで計画でいっぱいだから、ウェブからエントリーしてくれ」と言われる。

3軒目は、個人のギャラリーで自分の作品のみを取り扱っていた。けれども、作品は観たいと言ってくれた。見ると「いいね」と「みんな親切だからいろいろなギャラリーに持っていくといい」と教えくれる。

4軒目のギャラリーもまた作家自身の作品を展示するギャラリーだったけれど、作品をみてくれた。とても気に入ってくれアドバイスをくれた。「このまちにはギャラリーが多過ぎるし、作家もたくさんいる。だから作品を売ることも難しい。君の絵だったら、このまちより、ボストンの方がいい。」そう言ってネットで検索して、ギャラリーを紹介してくれた。ボストンに滞在するのは1日だけ。行けるのか。

帰りにビールを買ってスタジオに戻る。

マークにギャラリー巡りの成果を報告する。マークは「ギャラリーならどこでもいい訳じゃないし、ギャラリーはビジネスだから、作家に対してフェアな姿勢じゃないことも多い。大切なのは、リレーションシップだ。信頼できる関係をつくることが大切だ」と言った。

「それにギャラリーに作品を持ち込んで、ああ素晴らしい!君の絵を買うよ、とか個展をやろう!なんてことは、そう起きないよ。だから無意味って話ではないけどね。例えば、俺がダブリンのギャラリーに作品を持っていったときは、まさにそうだった。作品をみたギャラリーのオーナーが三カ月後に個展をやろうと言ってくれて。でも、それからが大変だった。確かに絵を高く売ってくれたけど、好きでもない人たちとの付き合いが始まって、ギャラリーオーナーのおばさんの相手もしなきゃで、俺を彼氏みたいに扱いたがって。やめるのに3年かかったよ。」

夜は、ハンバーガーを食べようと街に出る。雨上がりの夜。いつも美しいプロビンスタウンが格別な風景を映している。とりあえず飲もうとバーに入る。先週の金曜日と同じバーの同じ席。同じ人が座っていた。名前はマイク。まだこのまちにいるのか!とビールを奢ってくれる。この後、カラオケに行こうと言って、食事をしたら合流する約束。外に出たら、もうレストランは閉まっていて、ピザを食べた。カラオケに行ったら、身分証が必要だと言われる。ステージで、マイクがレディオヘッドのクリープを歌っている。

マイクは、入り口で身分証を持っていなくて入れないぼくらをみて、歌い終えると、ステージから降りてきてセキュリティーに交渉してくれた。けれどマイクはロックスターではないので、なんの効力もなく「ノー」だった。でもマイクの調子よく歌っている姿がみれた。カラオケはカラオキと発音する。

 

アパートに帰って飲み直した。スタジオとアパートをシェアして、深夜まで語り合える親友がいることに感謝。日本人とアイルランド人が、アメリカでアート活動をしている。国境も人種も言語も超えて。

どこか遠くの理想よりも、目の前や足元にあることの方が、確実で信頼できる。いまある自分に繋がるネットワークが既に価値だと気付かされた。ぼくは作品を持ってギャラリーを回ったけれど、DNAギャラリーという場所に滞在制作しているのだから、そのギャラリーが今回の着地点だった。答えは足元にあった。

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