いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

夢が叶ったら、すぐにまた次の夢に飛ぶ

今日は水曜日。朝から改修仕事をしている。家とは何か、この3年くらい考えてきた。きっかけは空き家。どうして古い家は、家賃が安いのに好まれないのか。なんならゼロ円のこともある。どうしてひとは、働いたおカネを高い家賃や新しい家のために費やすのだろうか。

古い家に住んでみれば、何の不自由もない。むしろ家賃が安くなって、自由な時間が増える。ぼくの場合、空き家を改修したおかげで、それが仕事になった。

今回の依頼主は、まのあけみさん。シンガーソングライター。昨年の12月に高齢女史のシェアハウスをつくると相談をうけて、ひと部屋を改修した。

その仕事の続きを依頼された。仕事は誰かの役に立つことをしたい。誰かがやれないこと、社会の循環を悪くするところに働きかけたい。

この空き家改修のメンバーには、津島の資源カフェで働く南さんがいる。資源カフェとは、廃品回収買取して、それをまた売ったり輸出したりして、利益を出している。その資金でカフェを運営している。南さんは、そこで働きながら、家の解体や廃品回収をしている。まのさんが欲しいモノがみつかると南さんは、軽トラックで運んでくる。そのすべてが不用品なのだ。

 

世の中には、必要とされないような資源が溢れている。必要とされないように思えるけれど、場所を変えれば、そこにはニーズがある。

場所を変えれば、役に立つことがある。ある場所にはないものが、別の場所では重宝される。海で漁れた魚を山に暮らす人々に届ける、森の木を製材して町の暮らしに届ける。それは才能だったり、技術だったり、モノだったり、違いにこそ、仕事や利益が発生する。

まのさんは、建築士など専門家に頼らず自分が監督になって、空き家の改修をやっている。いろんな技術を持ったひとが改修に出入りしている。もう普通のやり方じゃなくて、それでも成立していて、個性的な家に仕上がっている。

 

ガス屋さんが来たときに何屋か聞かれた。「北茨城市から来て、壁に色を塗ってるんです」と答えた。「わざわざ、そんな場所から呼ぶなんて、よっぽどの技術なんですね」と言われた。

ぼくは、決して建築的な技術や経験や知識が優れているのではなく「作品を完成させる」という技術を持っていることが、いろんなひとの仕事をこの改修現場で見て分かった。

3年前、今いる津島市で、はじめて空き家に暮らしながら改修をしていたとき、テレビも冷蔵庫も洗濯機も風呂もなくて、技術もないから、家賃をゼロにしてもらう代わりに、タダ働きして、空き家という現象に取り組んできた。この話は、本にまとめてあって、編集社に赤入れしてもらった原稿を直すところまできている。2冊目の本だ。

空き家の改修は仕事になって、考えてみれば、アート作品のオーダーが4つもあり、本の出版予定もあり、バンドのプロデュースをしてくれるひとがいて、ぼくの仕事を待っているひとたちがいる。3年前からしたら、夢のようなライフスタイルだ。

けれども、まったく満足できない。もっといい作品をつくりたい、といつも思っている。夢は叶うとあっという間に覚めて、退屈な現実に飲み込まれてしまう。だから、夢が叶ったら、すぐにまた次の夢に飛び込んだ方がいい。
Because I can't satisfaction. I would like to make more better art. I always think like this. When a dream comes true, I wake up from a dream. I realize to be a reality. So When I come true a dream, I run into a next dream.

今日は、作業をしながら、次の個展の作品のイメージを探していた。シンプルなのだけど、オリジナルな技法でつくられた作品。単純な作品がいい。この方向性の作品をつくってまのさんの家に飾りたいと思った。数年かかるかもしれないけど、作品をもっと売って、つくったおカネをエネルギーに、社会の循環をよくする活動をしたい。すぐにおカネにならないようなことに取り組んでいきたい。

 

3年前と同じようにコツコツと3年を過ごせば、また違った景色が見れるように思う。もっとも3年前と違うのは、妻のチフミが、そのときよりも、純粋に楽しく日々を過ごしていることだ。

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One of these day 14


夫婦芸術家
檻之汰鷲(おりのたわし)

http://orinotawashi.com/