いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

カミサマは怒っているのではなかった

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神さまの怒りで、家のなかに水が吹き出したのだろうか。自然に囲まれて暮らしていると、そんな不思議なことが起きる。今日、古民家の改修作業をしていると、師匠が「庭のヘノコ石を運ぶっぺ。」と3人の仲間たちと現れた。

このARIGATEEには、たくさんの石がコレクションされていて、男性器と女性器のカタチの石は、ちょっとした名物だった。それは、ヘノコ石とか陰陽石(いんようせき)と呼ばれていて、ヘノコは、男性器のことで、陰陽石は、夫婦岩のことで、古くは子宝や安産祈祷の神として崇められていた。師匠は、先祖からのモノだから、大切にするため神社に奉納することにしていた。なんでも神社にもヘノコ石があるらしい。神聖な石なので御神酒と塩で清めて、なかなかの重さなので、大人5人で、知恵とチカラを出し合って石をトラックの荷台に乗せた。御神酒は飲んだらいい、と置いていってくれた。

師匠たちが、石を運んでいったので酒を飲もうかと、部屋に戻ると、聞いたことのない音がする。シャーーー。なに?なに? よく見ると、台所から水が吹き出している。外国人ではないけど、オーマイゴッド!!慌てて、駆け寄ると、蛇口が破裂している。手で塞ぎながら「チフミーー!」と叫んだ。

「何ー?」と現れた嫁も状況をみて、驚いたものの、すぐにタオルをたくさん用意して蛇口に巻いた。天才的な迅速な対応にもかかわらず、それでも水は止まらない。漬け物樽を蛇口の下に置いて、溢れる水をなんとか溜めて家が濡れるのを防いだが、それでもすぐ溢れてくる。

「水の元栓を閉めるんだ!」と叫ぶもどこにあるのか分からない。パニックだ。せっかく改修した家が水浸しになってしまう。「これは、カミサマの怒りかもしれない!」ぼくがそう言うと「そんなこと言わないで!」と嫁チフミに怒られる。

水を止めたい。チフミが師匠に電話した。ぼくは、柄杓をみつけて、樽の水をバケツに移す。溜まったら外に捨てる。この繰り返しで、浸水は防げるようになった。頼みの師匠は、電話に出なかったので、ぼくが、水の元栓を探したが、まったく見当たらない。どうしよう、どうすればいいんだ、と焦っているうちに師匠からの折り返しの電話で「井戸の電源を落としてみろ」

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そうして、水は治った。ARIGATEEの生活水は、井戸から汲み上げていて、ここ数日の寒さで、凍って出なくなっていた。蛇口の水が凍って膨張して、亀裂をつくり、氷が解けて水が吹き出したようだった。井戸だから、水道局に問い合わせる訳にもいかず、自然と共に生きるなら、あらゆるトラブルは自己責任になることを学んだ。

 

しかし、水が吹き出すタイミングに驚かされた。なにせ100年以上同じ場所にあった石を動かしたら、水が吹き出したような話だ。事件の最中は、カミサマの怒りとも思ったけれども、事態が終息してみれば、逆に良かったとも思えてきた。

 

例えば、数日不在にしているときに水が吹き出していたら、もっと事態は最悪なことになっていた。それに、凍っていた井戸水を解かしてくれたと解釈することもできる

 

「女性器のカタチをした石を動かすと、水を出してくれる。」

そう言い伝えよう。

 

なにせ、水がなければ、人間は生きていけない。実際、水が出なくて困っていた。だから、この事件の数時間後には、ぼくたちがいるときに水のトラブルが起きてくれたことへ、また水の恵みに対して、感謝する気持ちになった。

そんなトラブルも乗り越えてみれば、愛おしいばかりの、毎日コツコツと改修している北茨城の古民家ギャラリーARIGATEEは、かなり面白い空間に仕上がってきた。この場所が、いろんな人に利用され、愛され成長することを願う。

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