いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

好きなことを続けるのは、おカネのためではない。その経験や技術が人生をつくる道になる。

f:id:norioishiwata:20171025075923j:plain今日という日、そしてその時に感じたこと、その気持ちも、その瞬間にしか存在しないから、メモしておく。

2014年から2016年にかけて、空き家を改修して、その経験が仕事になってきた。愛知県で内装を依頼され、東京のマンションの内装を相談され、北茨城市では、古民家をギャラリーにしようとしている。好きで、やっていたことが、仕事になってきた。

アーティストだということで、デザインを頼まれるようになった。友達のバンドのロゴ、アプリのデザイン、バッチのデザイン、もしかしたらバスに絵を描く話しも飛び込んできた。ぼくは、アート作品で、誰かを楽しませたり、喜ばせたりしたいと考えているので、頼まれれば、その人のために作品をつくる。依頼内容が明確であるほど、その仕事はデザインになる。ぼくは、自分の想像力を誰かのために使えるなら、それほど嬉しいことはない。だから、デザインをするのも好きだ。

f:id:norioishiwata:20171025080207j:plainただし、楽しくないことはやらない。なぜなら、時間と気持ちに余裕がなくなると、失敗できなくなる。そうすると、成果が出ることしかやらなくなる。だから、仕事は、ひとつひとつを大切にやれるほどの数でいい。

大人になるにつれて、好きなことをやらなくなる。好きなことを我慢できるようになってしまう。我慢しているうちに忘れてしまう。ああ、あんな夢があったけ。好きなことを手放す大抵の理由はおカネだ。どうして、楽しいことを止めてしまうのか。好きなことをやるのは、競争ではない。好きだからやる。楽しいからやる。それで充分だ。

f:id:norioishiwata:20171025080325j:plainぼくは中学生のとき、音楽を聴くようになった。高校生になると、バンドを始めて、学園祭で教室をライブハウスにした。

ぼくのバンドは、特に売れるような音楽ではなかった。むしろ、ノイズやハードコアパンクの激しい音楽だった。当然、大学を卒業しても、何の可能性もなかった。それでも、音楽が大好きだった。

大学生のとき、山奥でイベントが開催されているとの噂を聞いて、友達と電車とバスを乗り継いで、辿り着いたのが長野県の廃校を会場にした音楽イベントだった。そこで知り合ったのが、日本のフェスティバルをつくることになる先輩たちだった。ぼくは、大学を卒業して、この業界に入った。運動会テントを立てたり、ステージをつくったり、駐車場係をやったり、スピーカーをトラックに積み込んだり。アルバイトだった。それでも、音楽が仕事になってほんとうに嬉しかった。

先週の木曜日には、春風という代々木公園で毎年開催されるフリーフェスティバルの打ち合わせがあった。ぼくは、春風では、トークイベントを企画している。そこに出演するために「生活芸術家」という肩書きをつくった。それを想い出した。春風は、ぼくが大学生のときに出会った先輩たちが、つくったフェスティバルで、つまり20年近く関わっている。ぼくは先輩たちがつくったフェスティバルのステージに立つのが夢だった。言いたいのは、続けることの大切さだ。

ぼくは、結局、バンドも続けている。何のために? 自分が音楽が大好きだから。その想いをカタチにしている。歌がヘタなのに20年くらいボーカルをやっている。バンドはいよいよ無駄なことかな、と思っていたけれど、先週、六本木ヒルズで、スピーチする機会を頂き話してきた。人前で話しをすることは、ステージでパフォーマンスするライブと同じだった。つまり「歌う」という行為の裏にある、マイクで自分の考えや想いを伝える技術を20年の間に磨いていたらしい。

f:id:norioishiwata:20171025080513j:plain人は、おカネにならないことを無駄だから止めろと言う。ぼくも散々、才能がないから音楽はやめた方がいい、音楽は、仕事にならないから、きちんと会社に就職した方がいい、アートで喰っていくことはできないと、アドバイスを頂いた。けれども、好きなことを続けるのは、おカネのためでも、成功するためでも、肩書きのためでもない。他の誰でもない自分自身を生きるためにやっている。他の人から見れば、まったく価値のないこと、そこに道がある。なぜなら、そこにはこれから価値が生まれる未来がある。

もし、ぼくが何かの役に立たつなら、こう助言したい。好きなことをやめても何にもいいことはない。とくに、これからの時代。好きなことは、おカネにならなくても、続ければ、経験や技術になる。何より、好きなことは、続けることができる。だから、くれぐれも、諦めた人や好きなことを手放した人の言葉に耳を貸すことはない。自分のやりたいことの価値は自分にしか分からない。

f:id:norioishiwata:20171025081237j:plainザンビアの友達はこう教えてくれた。「みんなウサギを追いかけるけど、途中で諦めてしまう。諦めなければ、諦めたヤツのウサギも手に入るのに。ネバーギブアップ。これは自分のためではなく、仲間にその姿勢を伝えるためにやるんだ。」

ネバーギブアップ。
諦めるなんて、死ぬまで必要ない。
まだまだやれる。