いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

【古家採取活生計画 vol.1】雨が漏れば修理すればいい。昔は修理しながら暮らしていたんだから。

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日本では古い家に住みたがる人は少ない。ヨーロッパでは中古市場が80%なのに対して日本は新築市場が同じ割合だ。

どうしてなのか。古い家でも掃除したり修理すれば、充分快適に暮らせるはず。そう考えて愛知県津島市の築80年の長屋に暮らしている。

9月中旬。大雨が続いたある日、ついに雨漏りした。床にバケツを並べてやり過ごしたが、いつも言われていたことが頭をよぎった。
「ここの屋根はコンクリート瓦だから全部取り替えないと駄目だ。」
建築家を始めとして様々な訪問者たちが口を揃えて言っていた。

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雨が落ち着いたある日、屋根の上に登ってみた。見渡すと、台風一過の空が澄んで綺麗だった。古くて使えないと言われてきたコンクリート瓦たちもきちんと屋根に整列していたが、数枚割れていた。位置から判断して割れた瓦の下に水が進入して雨が漏れたらしい。古い家の屋根は、野地板という木の上に泥を被せてその上に瓦を並べている。乾いた土は水をよく吸収するし、水は高いところから低いところに流れる。瓦をきちんと重ねておけば、水が進入する箇所は理屈的には存在しない。

割れた瓦を予め買っておいた防水修理テープで張り付けた。ついでに、他の割れた箇所も修理して、ズレた瓦を重ね直して整えた。

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以来、どんな雨が降っても雨は漏っていない。最近、この長屋を訪れた人が言った。
「わあ!コンクリート瓦じゃないですか。これは駄目ですね。ここに暮らすなら全部取り替えないと。雨がたくさん降ったら雨漏りしますよ。」
ぼくは自分で屋根を直したことは言わなかったけど、この人がコンクリート瓦の屋根に登ったことも暮らしたこともない人だと分かったので、
「そうですね。いつかは取り替えないとですね。お金があればやるんですけどね。」と笑って済ませた。

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コラージュ・アーティスト
檻之汰鷲(おりのたわし)
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