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「何もない」けど書いてみたら溢れてきたカタチとことばたち

月水金をボルダリングジムのアルバイトをして、火木は作品をつくった。嫁はいま専業で制作している。2人でつくると全く新しい世界が見えてくる奇蹟が気持ちいい。いまは、カタチをつくっている。今まで培ってきたテクニックを重ねて、つまりコラージュしてイメージの外側をカタチにしようとしている。

イメージとカタチとは、モノと言語の関係と同じだ。これまでに存在しなかったようなカタチを表現する、この追求にアートを感じる。これが何か、と問うような愚かな思考を切り捨てて、存在そのものに迫る。これはこれであって、それ以外の何物でもない。つまり、君は君であって、それ以外の何者でもない。

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火曜日は嫁と休憩に図書館に行った。棚から「人間」というタイトルの本みつけページを開いた。自己を知ることが哲学の主題だと書いてある。哲学について追っていくと宗教を横切る。脇見をすると「己の道を見出すことが人生だ」という警句に出くわす。しかし、人間を書いたカッシーラは、内観だけでは人間を知ることにはならず、社会即ち他のモノとの関係があって初めて人間になるという。

木曜日は朝からカタチをつくった。答えはないから、カタチとカタチを重ねて「これだ」という組み合わせを探る。予めない答えが手探りのうちにみつかる。経験がその答えを導き出しているように思う。

鈴木大拙が無心について書いていた。科学者は林檎をあらゆる成分に分解して名前を与える。いくら新しい成分をみつけ名前を与えても林檎にはならない。科学者は負けじと名前を与え続け嬉々とする。しかし林檎の方は、こういう成分にしてやろうとか、科学者を驚かしてやろうとか考えていない。つまりこれが無心だ。

作品をつくるとき、意図が過ぎると退屈な作品が生まれるのは、きっとぼくが科学者になろうとするからだ。むしろ林檎の側の作品になって成るがままに、カタチを見出せばいい。

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水曜日の夜、チフミと口論になった。物事が先に進まないそのもどかしさが原因だった。
しかし、社会に関わればすべて同じようにもどかしい。その縺れ合って絡まった状態で、みんな仕事をしている。作品をつくることは仕事ではない。なぜなら、誰にも要請されていないから。だからこそ純粋に創造に浸かれる訳だ。憑かれるとも言える。

とても単純で縺れの少ない状態で生活できることにぼくは平穏な静けさを感じて、心地よい日々を過ごしている。「これでいいのだ」とぼくは思うが、現実と未来を透視する嫁は、心を掻き乱してしまう。チフミがそう感じてくれるから、ぼくに平穏がある訳で矛盾した両極が見えたところが落ち着き処。次はぼくが取り乱してチフミに平穏が訪れることを願う。

過去の出来事を検証するミーティングに参加したが、過去の風に煽られまくって、また同じ穴に落ちた。呼ばれて覗いたのが仇となった。何が起きても誰が悪い訳でもなく、罪を憎んで人を憎まず。であるなら、ぼくは人を信じることを自分の信条とする。しかし、人に依存したり託すのとはまた別の話しだということを肝に銘じる。

自分が大切だと感じるものを大切にして、嫌だと感じるものには距離を置いて交わらず、小さな生活圏をコツコツと耕していけば、あちこちから芽が出る。芽が出ないからと言って種を罵る農夫がいるだろうか。

これからやろうとしているのは、種を撒く作業で、その畑を開墾している。あくまで自分の畑であって誰かの畑の小作人になりたくはない。違う次元、つまり違うレイヤーで同じ畑を耕すようなマトリックスは起こる。それは瞬間的な錯覚でやはり耕しているのは自分の畑だ。しかし油断すれば、運命の舞台監督は、君をそのまま別次元の畑へと売り飛ばすことがあるから注意したい。時は金なり。人生を売り飛ばせば、あっという間にプランテーションの奴隷だ。

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遠くへは行かず、軸をしっかり自分の人生に置いて、あちこちのレイヤーやマトリックスを行き来するサイエンスフィクションを現実にやってのけるのが、非現実の世界で夢を見る男の配役だ。死ぬまで夢を見続けていたい。地図もあるしルートも把握したしあと少しのポイントを確認すれば、次の冒険を始めることができる。

木曜日の夜、渋谷で夏の話しをして盛り上がり、帰り山の手線で、サムクックの1963年ハーレムスクエアのライブ盤を聴いた。サムクックは登場して言った。「今夜だけは、戦わないでくれ。ただ感じてくれ。」たった1日でもそういう日があれば、と思うと涙が溢れた。そして山の手線で、この日記を書いた。

夫婦で作品をつくる
コラージュ・アーティスト
檻之汰鷲(おりのたわし)
http://orinotawashi.com/