仕事とはニーズをみつけ、お金にすること。好きが増えて収入も増えれば、この上ないハッピーだ。

一週間、長野県岡谷市の嫁の実家に滞在した。場所を変えると生活のパターンも変わる。やれること、やりたいことがはっきりしてくる。場所を変えてもやることは、作品をつくること、文章を書くこと、身体を動かすこと。それができて嫁が楽しそうにしていれば、ぼくは満足だし、幸せな人生だと言える。

怪獣をつくっている。嫁の姉の子供3歳が、恐竜をつくって欲しいと言った。ぼくらはオーダーを受けた。嫁の母が、竹で編んだ椅子をつかったらどうか、とアイディアをくれた。
椅子に新聞紙でカタチをつくり、濡れた段ボールを小麦粉を煮た糊で表面を固めてキャスターをつけて乗り物にする計画。課題は仕上げ。駅の広告などの巨大なポスターを手に入れ、それで表面をコラージュしたいと思う。宿題は、廃棄される大型ポスターの行方を追うこと。

チフミの実家の近くにクライミングジムを探すと、電車で20分のところにみつかった。ジムはロープとボルダリングと両方のクライミングを楽しめる。
ジムが変わるとコースも変わり、慣れるのに時間がかかる。実力を発揮できないまま、体力がなくなっていく。東京のジムと違い、広いスペースで大きな動きができた。このジムは別の建物を解体した廃材などを集めてつくられていた。

好きという想いは伝わるもので、東京のクライミング・ジムのプロモーションの仕事をすることになった。計画し実行するのがミッションだ。

諏訪の友達夫婦に会った。原田泰治という有名な画家の娘で大学の先輩と、M.M. DelightというVJのパイオニア森田勝の弟子で、20代30代と同じ場所で遊んできた仲間ヤマパが結婚して諏訪に住んでいる。ヤマパは、嫁の父、原田泰治のマネージャーを仕事にしている。

原田泰二さんは、絵を純粋な表現にするため売らなかった。代わりにデザインで糧を得た。絵は絵本になった。それでも喰っていくのでやっとだった。45歳のとき、絵が朝日新聞の日曜版で使われ、それをきっかけにブレイクした。朝日新聞の担当者が原田さんの絵本を本屋でみつけ気に入った、それがきっかけだった。想いを持ち続けて生きるのはサバイバルだ。

友達夫婦と話して思った。まだまだ途中だけど、嫁のチフミに負担をかけたくない。でも、この生き方は、どうしても険しい道を常に選ぶことになる。


金曜日の朝、チフミが厄除けに行きたい、と言った。チフミの父が馴染みのお寺に電話してくれた。朝10時にお寺で祈祷してもらうことになった。向かう道、桜が満開で鳥が鳴いていた。
祈祷の内容を選んで、住職さんに伝えると「商売繁盛は、どんな商売ですか?お仕事は何をしているのですか?」と嫁に聞いた。
嫁は「夫婦で絵を描いています。」
「ほう!どんな絵ですか。」
「コラージュと言って、雑誌などを切って貼る、はり絵です。」そう言って2人の名刺を渡した。
「おお!これは法輪に似ていますね。どこから入っても悟りを開ける輪です。とてもいいですね。お店を持っているのですか?」
「インターネットと口コミで販売しています。」
「売っているならプロですね。しかし、素晴らしい絵ですね。わたしの姉の旦那が和歌山でギャラリーをやっています。よかったらご紹介しますよ。」
ぼくらは住職さんに是非お願いしますと言って、祈祷の御礼を言うと、「わたしの兄の絵をみせましょう。こちらへ。」と別の部屋に案内してくれた。

そこには、目が覚めるほどの青い絵があった。真ん中に青い鬼がいて手に持つ剣から龍が迸る。空には太陽と月。遠く背景には山脈が霞む。足元には崖があり、波が砕けている。あの鬼は、よく見る姿だが、名前を知らない。思い出した、鬼じゃない不動明王だ。住職さんが言うには3年を費やして完成した作品だそうだ。

金曜日の夜、愛知県の津島で知り合った音楽家のヒエイさんに電話した。津島の空村の物件が使えなくなり、プロジェクトが中断したことを残念に思ってくれ、連絡をくれた。ヒエイさんは、大正時代の建物を400坪の土地に持っているらしく、それを利用して、またプロジェクトをやったらどうか、という話だった。

道がまた開けた。その道をどう歩いていくのかデザインするのが、生きる技術のひとつだ。悲惨な旅にもなるし、愉快な冒険にもできる。毎日の出来事がシーンになり、シナリオが編まれて、人生が続いていく。

いま必要なのは好きを消費から収入にする技術。仕事とはニーズをみつけ、お金にすること。好きが増えて収入も増えれば、この上ないハッピーだ。0円では何も起こらない。ゼロからどうやって経済を起こすのか、どこにいても、生きていく糧をつくる技術を身に付けること。
まずは、お世話になっているクライミング・ジムのプロモーションを手掛けてみることから始めよう。


夫婦で作品をつくる
コラージュ・アーティスト
檻之汰鷲(おりのたわし)
http://orinotawashi.com/

生きる芸術のための生活者
石渡のりお
norioishiwata@gmail.com