いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

小さな1枚の絵が、誰かの毎日をそっと照らす光になれたら、と思う。

柳宗悦の民藝が好きで、急に作品をみたくなり、駒場東大前にある日本民藝館にいった。生活のながの芸術はぼくのテーマでもある。


オープンの10時を目指していくと、山の手線は満員電車だった。人は密集すると殺気立って笑顔も消えてしまい、本来の優しさも一緒に消えているんだと思う。そうやって人間の美しいところを掻き消してしまう社会を変えたいと思う。

それが風車と戦うドン・キホーテほどの狂気なんだろうとも分かったうえで。誰かがやってくれることなんて、誰かが誰かのためで、決してぼくのためではない。だったらぼくの想いを実行してカタチにできるのは自分しかいない。その点で、犯罪者が超えてしまう境界線が理解できる。

駅から歩いて7分で現れた建物からして民藝な雰囲気が溢れる巨大な日本家屋。陶器や染め物、アフリカの仮面、籠や日曜日品の数々。いまではどれも貴重な品々。いまでいうアーティストや作家がつくったものではない。無名の作り手が日々使う道具に少しだけ模様や意匠を施したもの。主張のない静かな佇まいに心が洗われた。自分の興味が長い時の流れにつくられたカタチなんだと改めて気が付いた。

欲しいものを目に焼き付けて、自分の創作に活かそうと意気揚々と帰宅した。作品を新しいつくるためのウッドパネルを買わずに、失敗作のパネルを再利用することにした。表面を削っているうちに、チフミがサンダーでやった方が早いと言う。サンダーのスイッチを入れると異常な音がする。何度もスイッチを入れ直したが、壊れてしまったらしい。道具の使い方が悪い。

気を取り直して、比較的綺麗なパネルを選んでコラージュを始めた。久しぶりの感触。雑誌をめくり手が止まるページからパーツを切り抜いていく。中心のモチーフが決まり、民藝館でみた表装のようなカタチにしたいと考えた。そうして出来上がった作品だ。これはジャズ・シリーズ。即興の演奏のようにイメージを組み合わせて描き出す。音楽のハーモニーは女性のように美しく心を捉えて離さない。

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夫婦で作品をつくる
コラージュ・アーティスト
檻之汰鷲(おりのたわし)
http://orinotawashi.com/

生きる芸術のための生活者
石渡のりお
norioishiwata@gmail.com