いきるための芸術の記録

荒地と廃墟の楽園より

カヤックを2人乗りに改造して安乗の海で遊ぶ。2年前の理想が現実になった日。

安乗 2日目。朝、5時に目が覚めて日の出を見に海にいった。海は例えようのない色をしていた。

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昨日の夜、カヤックを2人乗りに改造した。舟をつくれるように空き家改修をした甲斐あって、カヤックの構造を補強しながら、乗り口を大きくすることができた。

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朝の2時間を新しい本の構想に費やせた。本は「空き家に暮らす」2014年から2016年までの活動をまとめた内容にする。本の出版先は決まっていない。それでも書く。完成させる。これは生きるための芸術という巨大なシリーズになっていく。これまでに2冊の本をつくった。
いつ出版されるか分からないが、誰かに出版してもらうために、売れる本にするために内容を変える必要はない。

朝9時にカヤックを担いで海へ。安乗の空き家から海までは歩いて3分。カヤックを海に浮かべ自分が先に乗り込んで、チフミが続いた。2人乗りに改造されたカヤックは、海を快調に進んだ。廃材を削ってつくったオールもまったく問題なかった。海と遊びながら暮らす日々が始まった。

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空き家の本をまとめながら、安乗の空き家は2年前に想像した理想そのものだった。足りないのは、あとひとつ。それは、どんな説明も必要ない最高の絵画。絵を見たひとがその世界に引き寄せられるような。

檻之汰鷲作品が欲しい方はメッセージください。norioishiwata@gmail.com まで。これから誕生する傑作をお譲り致します。

空き家に暮らす-三重県志摩市阿児安乗編

愛知県津島市から三重県志摩市阿児安乗へと向かった。安乗の空き家に一カ月滞在する。

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最近は、移動に高速道路を使わなくなった。理由は単純。出費を抑えるため。100kmマラソンする超人小山さんが東京から大阪までは高速道路を使わない、下道でも数時間しか変わらないから、と教えてくれた。面白い考え方だ。この数時間のために、いや、都市では、数分のことで神経をすり減らすのに。考え方ひとつで世界が変わる。

結局、6時間かかって安乗に着いた。ところが携帯電話の電波が入らないうえに、空き家を案内してくれるノリくんとも連絡が取れない。まあ、今日は寝れればいいや、とチフミと話して、電波の入る場所と安乗のあちこちを往き来して過ごした。万が一のためにキャンプする場所も探してみた。

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夜7時に連絡が取れ、あと1時間で戻るとのことだった。電話で空き家の場所を教えてくれたので、見にいくことにした。
6月に案内されているものの記憶は曖昧で、さらに自分は方向音痴。チフミの記憶を頼りに探してみたが、その空き家を発見できなかった。近くの公衆電話から連絡するとあと30分というので、荷物を整理して待つことに。

滞在する空き家は、高台にあって車では行けないので、コンロやマット、朝食分の食料、水、キャンプテーブルを運ぶことにした。すぐにノリくんが現れ、今夜からの我が家へと案内してくれた。

家は雨戸が閉まって、開けると意外にも綺麗な状態だった。電気、水道も開通してあり、風呂もトイレもクーラーもある。トイレは水洗、洋式、ウオシュレット装備の最高仕様。間取りはキッチン4畳半。10畳の部屋ひとつの平屋。これまで住んできた空き家のなかでも最優良物件。考えてみれば、トイレと風呂を完備さえすれば、逆に他の箇所はいかようにでも修理できる。すっかりこの家が好きになった。

しばらくの歓談の後、ノリくんがカニを獲りに行こうと誘ってくれた。
車で5分ほどの船着場の海中を懐中電灯で照らしてカニを探す。目が光るから分かるらしい。夜の船着場は、いろんな音がした。波、鳥、船の軋む音、風。景色は青紫で黒に飲み込まれていく。美しく静謐な空間。
「いた!」
ノリくんが網を水中に入れると壁と網の間にカニがいた。カニは生きているから素早かった。これが「生きがいい」ってことだよ。ノリくんが教えてくれた。そんなカニを3匹捕獲。

小さなバケツに入れられたカニは、争いを始めて、小さいカニが中位のカニの手を引きちぎり、大きなカニが睨みを利かせていた。海から唐突にバケツに放り込まれたカニは気が狂ったのかもしれない。カニじゃなくても自然から引き離されたら狂うのかもしれない。

「カニは早く食べてあげた方がいいね。」とノリくんが言った。家に帰って、塩とウィスキーで煮たカニを食べて寝た。安乗滞在記。第一日目。

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1日の中に自然と戯れる時間さえ持てれば

朝起きて、嫁と一緒に畑に行った。2年前にモロッコ式の窯を泥でつくった嫁の両親が持っている土地で、昨年、近くで山火事があったので自粛もあって放置してあった。

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畑は2mも伸びた雑草に覆われ、そこから窯の姿さえ見えない。窯の様子を見るために草を刈って刈って、まるで開拓使の気分だった。全身から汗が止まらなかった。夏の太陽がヒートアップさせる。やってもやっても窯に辿り着かず、ついにぶっ倒れた。日陰で休んだ。それだけ自然の中で身体を動かして気分は爽快だった。また再開して休んでを繰り返した。
できることなら、開墾して耕して野菜を植えたかった。しかし今回は、そんな時間がないから、と思いながらも、時間はいくらでもあるのに、ないと決めているのは自分な訳で。だから、秋にやることにした。今年の夏は、海で過ごすと決めている。日本の夏は短いから。

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朝8時から2時間やっても窯は見えず、今日はこれぐらいで終わらせることにした。雑草を刈りながら、世界中に、大地を耕している人々がいることを想像して、その仲間になれたようで嬉しかった。

帰るため、車に乗ると、蜂が入ってきた。窓ガラスに向かって飛んで、それ以上進めないのに、まだ飛んで、反対側に逃がそうとしても無駄だった。反対側に飛べば、広い空があるのに。やがて蜂は、力尽きて死んでしまった。この蜂は、必要のない欲望に突き動かされている人間みたいだった。果てしない欲望システムから抜け出して、社会が示す反対側へ歩けば、自由があるのに。

しかし、自由だからと、安楽ではないし、社会の反対側は自然だから、不安定で混沌としている。だけど、疲れたら休めばいいし、違うと思えば、その方向に進まなければいい。それだけの単純なこと。だから、自分のなかの自然な部分を開拓して道を切り拓いていく。

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これから先の夢を語ろう。それは2018年の現実になるから。

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ニューヨークからフジロックフェスティバルでの仕事経由、3泊4日の旅から、東京で次の旅の準備をしている。

今日から長野県岡谷市のチフミの実家に寄って車をピックアップして、月曜日に愛知県津島市に戻り、8月5日頃から、三重県志摩の漁師村の安乗の空き家に滞在する。2014年に計画したことが2016年に現実になった。明日の予定のように未来を想像すれば、それは現実としてやってくる。

ぼくは空き家に暮らし、ソーラーパネルで発電して、カヌーに乗って海と遊ぶ。これはまさに2014年にイメージした未来だった。追い続ければカタチになる。必ず。まずは自分が自分を信じなければ他に誰も信じてくれる人などいない。

であるなら、これから先の夢を語ろう。それは2018年の現実だ。

ぼくは英語を勉強し続けて、世界の人々とコミュニケーションをしたい。継続することだ。その時間を確保すること。今年の冬は、制作に没頭したい。新しい技術とカタチを手に入れたい。
海外で展開できる可能性を模索し続けること。まずの締め切りは8月31日。ジャパンハウス。ロサンゼルス、サンパウロ、ロンドンを巡る日本をテーマにした巡回展の公募。課題は日本的な作品。

ぼくは自分の活動がとても日本的だと思っている。なぜなら、宮沢賢治宮本武蔵柳宗悦に影響を受けているから。それは自然と芸術の道だ。それをどのように言葉に落とし込み、日本的な芸術だと伝えればいいのか。それは課題。

ニューヨークで出会ったアート作品を調べるうちに分かったことがある。作品が先ずあり、その後に説明や物語がある。だから、もっと作品づくりに没頭したい。なぜ芸術家が貧しいのか。分かった。貧しいのではなく、芸術以外を必要としないからだ。絵の具の方が、贅沢よりも食べ物よりも大切だからだ。

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青山、表参道、辺りの路面の空き店舗や空き家を利用してギャラリーを2日間だけ出現させる。来年の春か今年の冬にやりたい。音楽があってバーがあって人が集まり、ここはパーティー会場でもある。ソーラーパネルで電力を賄う。これが作品。

秋から冬の間に「古家採取活生計画」の原稿をまとめる。これは2014年から2016年の活動記録。人生そのものを芸術にするならば、活動記録をまとめ続けることだ。2017年には、いまよりも、日本と海外を行き来してアート作品を発表しているだろう。2018年には、海外に拠点を移して制作に没頭している。イメージできることは、すべて現実になる。

何処にいても、目の前の風景を切り取りたくなる、それが旅人の心だ。そんな気持ちのまま生きていきたい。

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ニューヨークギャラリー出会った「太古から未来を繋ぐカタチ」Matthew Ronay

ギャラリーを巡り歩いているとウィンドウから奇妙なカタチがあった。近づいてみると、こんな作品。木でつくられている。

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展示はこの作品をつくるMatthew Ronayがキュレーターを務めていた。

ステートメントより
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創作の源流は、いくつもの方向へ広がり、未知の自然にインスピレーションを受ける。
Laird Scrantonの本「The science of dogon: Decording the African Mystery Tradition」によれば、西アフリカのドゴンの人々は、地球創世の問題や原子レベルの科学、天体からあらゆる観察に基づく身体現象までを網羅し、建築、彫刻、象徴を通してその神話世界を作り上げている。
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彼の世界観は、神話や伝統や創世記を超えて、過去と未来がリンクするような、ひとりの人間が宇宙と接続するような地点から湧いてきているようだ。過去と未来がループするその宇宙が生み出した別世界からの物体。

Matthew Roneyは、1976年に生まれニューヨークを拠点に活動する作家。現在、Pérez Art Museum Miami (PAMM)で2017年1月まで展示プロジェクトを行っている。木や布や粘土を駆使してカラフルで美しい物体を制作する。

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なんだそれ。とも思うけど唯一無二の個性。すごい。

ニューヨーク ギャラリーPACE PRINTS 偶然出会った「Daniel Heidkamp」の風景画。

ニューヨークのギャラリー街、チェルシーを歩いてヘトヘトになった頃、嫁のチフミが、一軒のビルの看板をみつけ、その絵が見たいと言った。

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PACE PRINTSというギャラリー。

3階のそのギャラリーに足を踏み入れた途端、目に留まったのがこの作品。

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Daniel Heidkamp。マサセッチュー州のウエイクフィールド1980年生まれ。ブルックリン在住で作家活動をしている。

生まれ育った田舎の風景を切り取ったペインティングは、シンプルで素朴。その優しい風景に目を奪われた。
ギャラリーが配布している資料を読むと、同郷のWinslow Homerにインスピレーションを受けたと書いてある。その他、1920年代に漁師村で制作したEdward Hopperというアーティストの名前、Marsden Hartley、Stuart Davis、Mark Rothko、Milton Averyが挙げられている。

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Winslow Homer

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Edward Hopper

日本を旅して風景画を描いてみたいのでとても参考になるラインナップだ。そしてDaniel Heidkampがまさに。

ニューヨーク現代アートのギャラリー その1「Blackness in Abstraction」

ニューヨークのギャラリーを巡り、自分たちの展示の宣伝をしてきた。この地のギャラリーで展示される作品のクオリティは世界基準。それらの作品を見るだけでも勉強になった。ぼくらの好きな方向性を再確認し、ひれ伏すような作品に出会い、やる気に満ちてきた。

そのいくつかを紹介したい。
ニューヨークのギャラリー街チェルシーで遭遇したPACE GALLERYのグループ展。Adrienne Edwardsというキュレーターの仕事。これ自体が作品と呼べるクオリティー。1940年から現在に至るまでの黒いアート作品のコレクション。どこもかしこも白と黒のコントラスト。圧巻の強度。

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